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関心領域のPhoeBeeeのレビュー・感想・評価

関心領域(2023年製作の映画)
4.0
冒頭の不穏な音楽から始まる今作、その尺の使い方がもうこの映画は音楽(音響)で魅せる気満々ですよと言うのが伝わってくる。
実際、音響デザイナーは脚本家並みにアウシュビッツに関連する証言などの資料を大量にまとめ、その後に当時を正確に再現した銃声や囚人たちの苦痛や悲鳴を表す音響を作り上げたとのこと。

そしてカメラワークの部分で言うと多少のパンはありながらも、ほぼロングショットの固定カメラで物語が進んでいく。
なので俳優陣の細かい表情などは本人たちがカメラに歩み寄らないとほぼ読み取れない形になっています。
また、監督がアウシュビッツを美しく撮ることを望まなかった結果、人工的な照明は組まれず自然光のみで撮影がなされている。
その効果により常に不穏な空気が流れ、本来は美しく映る花も不気味な色に見え、更なる怖気を与えています。

撮影裏話的なところで言うと、カメラを360度設置する事により、定点カメラで見ているように撮られていて役者はその中で演技をしている形となっているそうです。

一方ストーリーの内容については、濃いか薄いかで言うと正直なところ薄い。
ロングショットで撮られてるのもあり、自分でその枠の中に散らばっている色々な情報を取りにいく必要がある。
故にこのタイトルの通り、【関心】がないとただの風景映像となる。
まさに壁の向こう側で起きている事には気にもせず生きている、今作で描かれている彼らと同様であるかのように。

ホロコースト映画や小説を幼い時から観てきた身としては、クリスティアン・フリーデル演ずるドルフとザンドラ・ヒュラー演ずるヘートヴィヒが、イタリア旅行に行きたいわ!いつ連れてってくれるのかしら?とベッドで笑い合うシーンは1ミリたりとも微笑ましいとも思えず、
サンドラの演技も上手すぎてどんとん嫌悪感に支配されていく。
育ててる花に灰を撒いて肥料としているシーンではもうメンタルボロボロでしたね。


自然光にこだわった結果、夜のシーンが通常のカメラでは撮影できず、考えた結果白黒のサーモグラフィー映像を使うアイディアはとてもユニークで、また不気味さを増す手法の一手となったのはお見事でした!!
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