マリリン

関心領域のマリリンのレビュー・感想・評価

関心領域(2023年製作の映画)
4.5
ジョナサン・グレイザーは大化けした。

ホロコーストを題材にした映画は数多ある。
『シンドラーのリスト』や『ショア』などの映画はイメージ(視覚)で人類史上最悪の大虐殺を描いた。一方で、2015年の『サウルの息子』は、視覚的要素だけでなく、収容所での音の演出にも注力することで、ホロコーストの凄惨さをよりダイレクトに伝えている。
『関心領域』もホロコーストにおける「音」の映画だ。

どの本だったか忘れてしまったけど、私たち人間は「見えているのに見えないようにする」「聞こえているのに聞こえないようにする」ことができるらしい。
『関心領域』は、まさに隣の収容所から漏れる音に対して「聞こえているのに聞こえないようにしていた」家族の話だった。

突如、物語のなかにインサートされるアウシュビッツの博物館の映像も嫌いじゃない。
博物館を開館準備のために淡々と掃除するスタッフの姿は、物語の一家と重なる。目の前に起きている出来事に対する私たちの関心は、当時の人々の関心と地続きであるという恐怖を思い知らされた瞬間だった。
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