りょうすけ

関心領域のりょうすけのネタバレレビュー・内容・結末

関心領域(2023年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

「関心領域」

第96回アカデミー賞にて音響賞と国際長編映画賞を受賞した話題のホロコースト映画がついに日本公開されたのだが、近くの劇場での上映がなく6月末までお預けを喰らいそうだったので、遠征してTOHOシャンテで鑑賞してきた。ほぼ満席の入りだったが、相変わらずこの映画館の治安は最悪。

「オッペンハイマー」と同様に第二次世界大戦における非人道的行いの被害を直接的には映し出さないという方式をとった作品。僕にとってのホロコースト映画「サウルの息子」はホロコーストの残虐性を収容所の囚人の目線から描き出した秀作で、高校生の時にシネマカリテで鑑賞して以来、映像が頭にこびりついている。

一般的には「シンドラーのリスト」や「戦場のピアニスト」などがホロコーストを描いた作品として認知されているだろうし、収容所でのことではないにしろ、ナチスの行いを直接的に描き出した作品が多い。

しかし、本作は収容所の横に住んでいる家族を描いた作品なのに、収容所の内部は愚かホロコーストの被害を映し出すこと一切ない。主人公がアウシュビッツの所長なので、それに関連した話は出てくるが、大量虐殺を行なっている人物のようには思えない。家族を愛し、仕事にも熱心な男。僕の目にはそう映った。

物語は淡々と流れていき、大きな盛り上がりが来ることはない。所々、奇妙な音楽や映像が展開されるところが恐怖を煽るが、これがどういった意味を為すのか理解が及ばない。全体を通して決して面白い映画ではないのだが、105分で全く飽きることはなかった。

ラスト、主人公は嘔気を催し、突然、現代の博物館と化したアウシュビッツ収容所で虐殺されたユダヤ人の遺品が大量に展示されるコーナーを清掃するスタッフたちの映像の移り変わる。そして再び主人公を引で映し出し映画は終了する。

おそらく、主人公がホロコーストに対して罪悪感を感じていることを表しているのだろうが、そんなに単純なシーンなのかと疑ってしまう自分がいる。噛めば噛むほど味が出てくるような映画で「そういえばあのシーンはどういう意味だったのだろう」と思うような場面の連続であった。

とにかく、色んなところに着目しているとあっという間の105分。刺さらない人には全く刺さらないだろうけど、どうしても無関心ではいられない。終わった後はドッと疲れが来たと同時に、得体の知れない恐ろしさに鳥肌がたった。そんな映画だった。
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