このレビューはネタバレを含みます
最初から最後まで緊張していたようで、手を握りしめながら観ていました。
淡々と描かれる家族の日常は、ただアウシュビッツ収容所の隣に住んでいるだけだと主張してるかのような平穏さがあった。
そこに暮らすものたちや働くものたちは塀の外側に関心などなく、現代を生きる我々と何ら変わりなく生きていて、塀の向こうで起こることはフィクションくらい遠く、自分には関係ないことのように見えてしまう恐ろしさは他人事ではなく、今の自分もどうなの?と問いかけてくる。
音楽がすごかった。
冒頭の闇がいつまでつづくのだろうとその不安を煽る音楽。
塀の内側のことを直接的な描写では映さず、音で表現してる部分が多く、空が赤く染まったり、鳴り響く銃声と悲鳴、画面が真っ赤に染まったり、なにか起こったのだろうなとおもうときには音楽がその役割を担っているようでした。
アウシュビッツの女王なんて笑って言えるくらいに安心安全な世界で裕福に暮らす妻の自分さえよければいいは露骨すぎて、泊まることさえできない母親のような反応が正常なのかさえわからなくさせる。
慣れてしまうことがおそろしいのか、それがふつうなのか、なにが正しくて正義なのかを考えさせられた。
近所の映画館がめずらしく満席だったけれど、イビキをかいて眠るものが数名、飽きているものもわりと目立ち、スクリーンに映る世界も、観ているこちらも、似通ったものがあるなとおもった。