ダースポール

関心領域のダースポールのレビュー・感想・評価

関心領域(2023年製作の映画)
5.0

歴史的大傑作。
あの完璧な映画作品『PERFECT DAYS』を負かしてのオスカー受賞も大いに納得でした。

実話ベースで身の毛もよだつゾッとする恐ろしい内容です。これまでの人生で最も恐ろしい映画体験だったかもしれない。

だけど、直に視覚に叩きつけてくるエグいシーンは一切ありません。
それだけを先に伝えたかった。



以下、感想はネタバレで。
クリストファーノーラン作『ダンケルク』のネタバレも同時に書いてます。
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『ダンケルク』でノーランは敵兵を1人も登場させず、また血を一滴も見せることなく、戦争の恐怖、絶望感、緊張感を演出した。

それと同じで、本作品は、

壁の向こう側の人を1人も登場させず(一度だけチラッと出た)、
また、その悍ましい光景を一切見せずに、
ホロコーストの恐怖、無惨、凄惨を演出した。


作中で目に映し出されるのは、
ただただ幸せな家族の平穏な日常。

楽しそうに遊ぶ子供達、
美しい花々、
他愛も無い女性の会話、
何気ない夫婦の会話、
などなど…。

しかし、それとは裏腹に、、

耳に聴こえて来るのは、
我々観客にとって、
それがさも日常かのように錯覚し、
何気なく自然に聴こえて来るのが、、

銃声、
番犬の吠える声、
看守の罵声、

そして、、、、、、、、、、

人々の悲鳴…

さらに、、

煙突の轟音…


そう、例えるなら本作品は、目で観る映画ではなく、耳で観る映画。
耳から入ってくる情報だけで、その恐ろしい光景が自ずと目に浮かび上がる。


なんて恐ろしい映画なのか。。。


だけど、そんな中、一筋の光を差し込む少女の存在には胸を撫で下ろす。

彼女の勇敢な行動は、
果てして、
善意からなのか?
愛からなのか?
それとも、
正義からなのか?

いずれにせよ、彼女の隠し置いたりんごのおかげで、命を取り留めた人もきっといただろう。


それと、この『関心領域』というタイトルも歴史的“名タイトル“。

この人類の恐ろしい歴史を振り返りながら、

いま、まさに、

“無関心領域“

にいる我々を、

嘆き、悲観し、憂う、

歴史的大傑作だった。