つる

関心領域のつるのネタバレレビュー・内容・結末

関心領域(2023年製作の映画)
4.8

このレビューはネタバレを含みます

最初の何!?あれ!?気持ち悪い音ー!
フィルムぶっ壊れたかと思うくらい長かったよね!?

アウシュビッツ収容所の真横に佇む一軒家。
そこに住む家族と自分達にどれほどの違いがあるだろうか。

終始音響がすごくて、響き出すたびに鳥肌立ってた。
あと、序盤で匂わされてた「ユダヤ人無限焼き大作戦」を直接的には見せず、「声」と「背景」だけで表す描写力。というかこの映画、A24の中でも特に自然描写とか、フィルム全体が鮮明で美しすぎないか!?

作中様々な形で表される「関心領域」。
・ヘス家におけるアウシュビッツ
・ヘス一家におけるユダヤ人の使用人
・ヘス一家のパーティでのそれぞれの人物達から見た他の人達、入れ替わり立ち替わりで人が行き来するけど、それぞれが別の空間にいるような、無視しているような雰囲気。
挙げ出したらきりがないほどの本作における「関心領域」という表現。
その「関心領域」を唯一、無神経にも突破できる存在、あの黒いワンチャン🐕
人と人が行き交う中、あたり構わず戯れてくるワンコロべえ。
でもその犬自体も、家族にとっては「関心領域」。

「関心領域」というものが、人間だからこそ存在する概念であることがわかる描写。

この家族はこの異様な状況に完全に麻痺している。
すぐ隣で大勢の人間が虐殺されているのに、知っているはずなのにあたかもこれを「幸せな家庭」のように謳歌している。
壁を隔てた収容所とヘス一家、これってやっぱ、映画と観客のメタファーでしかないよね!!!!????

ラストシーン、ルドルフが見た景色。
時が変わった現代、博物館?の清掃員が展示品を横目に黙々と清掃を始める。
「過去」の軌跡として、収容されていたであろう人々のものと思しきユダヤ人の履き潰された靴や服、私物の鞄が窓ガラス一枚を隔てて大量に「展示」されている。清掃員達にとって、アウシュビッツで過去に起きた出来事など、「関心領域」に他ならない。

「平成狸合戦ぽんぽこ」で高畑勲が描いた百鬼夜行の終盤のような
伝えたい事実があって、観客に真摯に訴えかけているにも関わらず、「面白かった」で済まされてしまう。サウンドオブサイレンス、全貌を観ているだけで目を合わせない。まさにこの映画が伝えようとしていることを観客が唖然としながら見届ける様、それこそこの映画自体が観客における「関心領域」なんじゃないか!?
そんな余韻を残しながらあっけなく終わってしまった印象。
つる

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