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関心領域のkapapamyのレビュー・感想・評価

関心領域(2023年製作の映画)
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興味深いけれど、面白くはなかった。

不安になるくらい長めに取られたファーストカット前の暗転とサラウンドの音楽で、特に言われずとも「これはその場に身を置くように実感することが重要なインスタレーションだ」という気持ちのセットができたので、話の起伏のなさには意識を落としかけつつもフラストレーションを抱くことはなかった。そういう意味で音響効果賞を取ったのは納得だった。

ただ、観た人たちが示し合わせたかのように口を揃えて言う「無関心の恐ろしさ」については、一部正しくて、一部正しくないのではないかと思っている。
灰が流れてきた川に浸かった子どもを必死で洗う親たち、焼却炉の煙を見つめたと思ったら突然姿を消す母親、「やっと戻れる」と言いながらゲエゲエ吐くルドルフたちは、自分たちの幸せを優先しているだけで全くの無関心とはまた違う気もする。
し、ラストの現代のアウシュビッツの施設を保存するために「無関心に」掃除をする人たちのカットは、確実に「無関心」を軸に過去と繋げられているが、彼らの関心のなさは果たして恐ろしいことだろうか。過ぎてしまった歴史的事実に毎日胸を痛めていたらこちらの身体が持たないだろう。
現代のシーンがあることで、明確に他人の痛みより自分の暮らしを優先させる人々、もしくは我々、に鑑賞者の関心を向けることをこの映画は意図している。

めっちゃ長くなってしまったけど、テーマ設定とそのアプローチ方法がかなり現代美術的だよね、良い映像作品ではあるとは思うけど面白い映画ではないかな、みたいなことをぐるぐる考えていた。
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