ハレルヤ

関心領域のハレルヤのレビュー・感想・評価

関心領域(2023年製作の映画)
4.2
1944年のアウシュヴィッツ。ユダヤ人収容所の隣に住むルドルフ・ヘス所長の家族。壁1枚を隔てているだけで、真逆の穏やかな生活を送る一家の様子を描いた物語。

公開当時から関心度が凄く高かった本作。アマプラに登場との事で早速鑑賞しました。ユダヤ人虐殺の象徴とも言われているアウシュヴィッツ収容所。そのすぐ隣で何事も無いかのように過ごす1組の家族。

そのまんま見るとどこにでもいる家族ですが、その隣から僅かに聞こえてくる謎の音。今でこそ分かる乾いたような銃声。煙突から立ち上る死体を燃やす煙。収容所から見えるもの、聞こえてくる音の全てが観客側からすると嫌悪感満載で伝わってきます。

それを感じさせない所長宅。豪華な邸宅で所長が異動を命じられても、この生活を手放したくない妻。恐らく妻も隣で起きている事は多かれ少なかれ知っているはず。それでもその地がどうであれ豪勢な生活は止められない。戦争における神経の異常さを密かに表していると思いましたね。

使用人の女性が夜な夜な土木作業の現場にリンゴなどの食べ物を、そこでの作業を強いられる収容所のユダヤ人へ向けて埋める様子も描かれていて、胸が詰まる思いになりました。

本編では収容所内での出来事は一切映されません。先述の通り音と煙くらい。見えないからこそ伝わる恐ろしさ。その音も現地へ取材に行き、収容所から邸宅までの音の伝わり方まで徹底的に再現している裏話も凄い。アカデミーで音響賞を受賞しているその理由もよく分かります。 

本編の最後に映される現在のアウシュヴィッツの様子もまた印象的。ここで起きた悲惨な出来事が壁1枚隔てただけで外部にはほとんど分からない。その事実を知るだけでも本作の存在意義は高いものだと思いました。
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