デニロ

リトル・リチャード:アイ・アム・エヴリシングのデニロのレビュー・感想・評価

3.5
彼のことをゲイだと何となく知ったのは『ジェームス・ブラウン 最高の魂を持つ男』だった。それまで彼のことは名前しか知らなかった。「のっぽのサリー」「ルシール」が彼の歌だってことも、あ、そうだったんだとしか。

ロックンロールという名称の発祥は諸説あるそうだけれど、リズム&ブルーズという音楽ジャンルが黒人の音楽ということになってるんで、白人の国アメリカとしては、それに影響されて音楽シーンに出て来た白人歌手にリズム&ブルーズの名称はちょっとなあ、ということで或るアメリカのディスクジョッキーが、これからはロックンロールと称しようということにしたとかなんとか。ビル・ヘイリーとかエルヴィス・プレスリーとかジェリー・リー・ルイスとか。

同じ黒人音楽だったジャズ界でも、ベニー・グッドマンやグレン・ミラーがスウィングの王様とか帝王って呼ばれているのはおかしいだろ?と、カウント・ベーシ―は憤っていたけれど。

序盤から中盤まではテレビの過去画像をだらだら流して、ミック・ジャガー、ポール・マッカートニー、トム・ジョーンズ、ジョン・ウォーターズetcのコメントを入れていささか退屈だったのですが、ツアー中に火の玉(ソ連の人工衛星スプートニク)を夜空に見て世界の終末が近いと感じ電撃的に引退して聖職者になる経緯とか、自身がゲイであることに恐怖するあまりにその性的指向を否定したり、神によって清められゲイではなくなったと発言したり、女性と結婚したり、ドラッグに溺れたり、宗教活動では飯が食えなくなったり、レコード会社との契約がこじれたのか印税が入らなくなったり、ロックンロールのコンサートツアーにゴスペルソングのステージを加えたりなんだかわからぬようなことになっていく後半はびっくり仰天。誰かが、リチャードは人のこころを自由にしたけれど、自分自身を解放できなかったと言っていた。

1988年のグラミー賞の授賞式には最優秀新人アーチストのプレゼンテーターとして登壇して、ねぇ、わたしにはグラミーはなんにもくれないのよ、おかしいでしょ!いつも言ってるけど、ロックンロールの創始者はわたしなのっ!創始者には何にもくれないの?!会場の大多数はスタンディングオベーションで応える。分かっているらしい。

50年代のロックンロールはもちろん、ザ・ビートルズやザ・ローリング・ストーンズのデヴュー当時のこともあまり知らないわたしですが、リトル・リチャードの歌唱する映像を観ていると、その後に出てきた様々なミュージシャンに影響を与えているんだつつくづく思う。ザ・ビートルズ時代のポール・マッカートニーのシャウトが好きなわたしは、それもリトル・リチャードかと瞠目する次第です。

あ、まさかの美川憲一の「お黙り!」もそうなのかしら?
デニロ

デニロ