『アイ・ライク・ムービーズ』は批評家でありジャーナリストでもある女性の監督がひっどいシネフィル男性の青年期ともいえる姿を基本的なトーンとしては愛くるしく描いているけれど、映画業界の闇に触れるシーンで転調してひとりの女性の語りを、ずっとたったひとりであるように撮る、その緊張とつらさ。
どうしようもないオマージュにまみれた短篇作品を親友と撮り、ずっと楽しみにしていたシネフィル受けする監督の作品を観に行った帰りに熱弁する姿は自分と被ったりもするし、ずっと続けてほしいなって思うけど、自分を守るために必要だったその危なっかしいペルソナだけは誰かなんとかしてあげてくれと祈らずにはいられなかった。そんなシネフィル青年を描くけれど、『ブレインウォッシュ セックス-カメラ-パワー』で指摘されるような「男性のまなざし」的なショットに頼らず、それでも明らかに引用元があるとわかることで、この青年を導きたい方向が明確にあるのだと少し安心した。