・ジャンル
実話ベース/ドラマ
・あらすじ
チリに暮らす貧困層の母子家庭の少年パブロ
彼はある日、世話を受けていた司祭の紹介でドイツ人達の共同体が創設する学校へ奨学生として入らないかと打診を受ける
それは季節労働者の母にとっても彼自身にとっても願ってもない話だった
共同体の指導者パウルはパブロに親身に接してくれ、歌が好きな彼は学校の聖歌隊へ入る事に
そうして寮に入って暮らす日々は勉強よりも労働が多かったがルドルフという親友も出来、初めの内はさして不満は感じていなかった
だが徐々に闇が彼の目にも入り始める
徹底的な監視、厳格な制約、性的虐待…
やがてその毒牙はパブロにも剥かれる様になり…
・感想
元ナチス党員で児童への性的虐待によりドイツを追われたキリスト教バプテスト派の指導者、パウル・シェーファーらがチリのマウレ州リナレス県パラルを開墾し設立したドイツ系移民を中心とする実在した入植地“コロニア・ディグニダ“を題材としたドラマ作品
共同体はシェーファー逮捕後の現在も“ビジャ・バビエラ”と名を変えホテルとレストランのあるレクリエーション施設として存続されているとの事
同じ題材を扱った「オオカミの家」を観る為の予習として鑑賞
実在したナチス系カルトの独裁地帯を描いているという事もあって話は一貫してしっかりと重たい
指導者パウル・シェーファーや裏で通じる権力者達を除く誰もが監視や懲罰を恐れているヒリついた空気もなかなか
しかし実話ベースの作品あるあるではあるものの史実が重んじられる為に話の抑揚は弱めでメインの登場人物達の幼さもあって過激な描写も見られないので映画としての満足度は期待よりやや低め
風化させてはいけない歴史だからこそもっと生々しい陰惨さを見せて欲しかったというのはどうしてもある
直接的な描写を避けるにしても示唆する場面で強烈な想像を促す要素が組み込まれていても良かったんじゃないか?と
またナチスの残党が設立した組織という事を考えると人種差別ももっと色濃くあっただろうにそこの描写は僅かにしかなく苛烈な物でもなかった点もモヤモヤが残った
支援をする権力者達の汚さもやはり少ししか見られずそこも物足りない
あとは独裁政権の余波も絡められていたらなぁ、というのもある
個人的に良かったのは意図的に外の世界の情報や一般常識を教育から排除していた事が分かる女性職員ギゼラとチリ人の男性職員ヨハネスのカップルがセックスを試みるシーン
画だけで見るとヨルゴス・ランティモス監督の作品の様なシュールさがあるが恐らくこれも現実だったというのが異常性の示し方として印象的だった
本作と「オオカミの家」以外にまだもう一作、同様にコロニア・ディグニダを描いた「コロニア」があるのでそれも観ておきたい