拘泥

乱れるの拘泥のレビュー・感想・評価

乱れる(1964年製作の映画)
4.1
初成瀬巳喜男.縦線と光と影が圧倒的に上手く美しい.電気を消した時の残る電気,割と長回しで座って顔に光が当たるシーンの気持ちよさたるや.
基本的に顔の往復によって駆動し,動作,視線,交錯,否,交錯しないということによる劇作.姉が決意したところを弟が追求する場面では,反比例のグラフの様に外/内方向に曲線を描く.それを直線で一瞬結ぶときに見る格子戸が堪らない.
ここまでの執拗な振り返りの蓄積や,遂に詰め寄っていく場面,そしてその繰り返しによる時のぶっ飛ばし方と電車のシーケンスが特にとても良い.
寺でただ一人待つところへ男が登りゆくシーケンス,その反復は上階で待たず,転がりゆくことか.これでタイトル『乱れる』は,カッコいいな.ラストの髪と彼らの心以外の何も,映画として全く乱れていないのに.でもなんか,快楽少なめ.俺の細胞は成瀬巳喜男には全然キュンキュンしないらしい.
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