このレビューはネタバレを含みます
高峰秀子喋り方仕草全部綺麗、
まず東宝スコープってなによ。
横長すぎてびっくりしたけどちゃんと1カット目から綺麗で好き。
《酒屋編》
ヴィジュアルに対していい意味で普遍性、作品としてのフットワークの軽さを感じつつも、必要なところでしっかり爪痕残す。
草笛光子が太陽みたいに白かったり暗かったり、居間から撮った酒屋の入り口が暗いと逃げ道なかったり、でも白のラベルの酒瓶でディープスペースは常に確保してるところとか、散歩してたら追い越し追い越されでイマジナリーラインがあやとりみたいになってたり。全ての所作を連続じゃなくて分割で撮ってるのがよかったな。未亡人のずっこけ受け身は1カットで撮ってた使い分けとか日本的映画人。
最後に何よりも言いたいけど日本建築衰退させたの誰だよほんと。今まであんだけ縦横線入ってる家住んでたから塩顔でもタダでヴィジュアル強度高くできてたのに。
「小津に比べてカラーで挫いたクロサワ」みたいなのは今の日本の映画のヴィジュアル面への意識の薄さでちょこちょこ出てるんだろうなと妙に納得した。
色々言ったけど話の起伏がとてもわかりやすい。ビジネス問題のサブプロットで物語の軸を形成しつつ、内的葛藤の棘出すところはちゃんと出す。「分かる深み」がめちゃくちゃ味わい深い。あと要所要所皮肉的なのが好き、
「僕はサラリーマンなんか向いていないよ。」
「酒屋も向いてないですけどね。」
結局向いてないって言ったやつが駆け落ちでトンズラこいてるし。
《宿屋編》
まず電車が走るシーン
電車の速度と角度、微妙な映像の温度感(時間帯とか考えたんかな)
銀河鉄道より銀河鉄道してた、永遠性。
おかげでフェーズがちゃんと明確になっていた。
そしてなんなんだあの旅館は。
美しすぎた、びっくりした、言葉にならん。
加山雄三死ぬ前にフリオチ効いてるの優しさだよなと後々思いながらも、まさか死ぬとは思ってない。
一度突き放した愛だからこそ、流れでてった幸福に「寂しい」なんて思えない。
ただ、見つめているだけしかできない。