Rain

四月になれば彼女はのRainのネタバレレビュー・内容・結末

四月になれば彼女は(2024年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

公開記念舞台挨拶に外れたので、ライブビューイング付き上映で鑑賞。

原作は7割読んで世界観は概ね理解しているため、オチは知らぬが感度は抜群、という最高の状態で観た。←👏

予告で繰り返し見たウユニの果てしない景色と、藤井風の主題歌「満ちていく」があまりにも合いすぎていて良すぎて、大いに期待。

結論、原作からの足し算と引き算が本当に非常に素晴らしかった。音も画もキャスト陣も最高最高超最高な作品になった。





以下、原作のネタバレも含みます。





原作では、ハル(森七菜)と藤代(佐藤健)に大きな影響を与え、2人が離れるきっかけにもなってしまう大島という写真部のOBが出てくるが、本作では大島は一切出てこない。代わりに原作では(たしか全く)出てこないハルの父親として竹野内豊が信じられないほどに痩せ細った姿で登場します。娘に執着して離れられないという役どころが本当に私的にど真ん中というか、見事な設定・脚本。

家族を見放すことが出来なくて苦しむ描写は最近の映画にとても多いけれど、虐待やら介護やら、なにか犯罪めいた(最近の邦画にありがちな)余計な匂いなどもさせず、お父さんがちょっと危なそうという絶妙な描き方で止めているのが私はとても好きだった。ここが妙に現実味・生活感のあるリアルな描写だときっと印象が違ったと思う。

旅行に行けずに帰ったハルを追いかけることができず、藤代がエスカレーターで泣きじゃくるシーンは生涯忘れられない涙シーンになった。大好きなのに追いかけることも喧嘩することもできない自分が情けなくて、ひたすらに虚しい。あんな顔して泣いてしまう佐藤健を見てしまって生まれた私の謎の母性はどこにやったらいいのでしょう。

弥生の妹は河合優実。原作だと藤代を誘惑する既婚者というヤバめ設定。本作ではその描写はなかったけど、藤代の本心を見透かしたような言葉を放つ姿は、原作解析度がレベチかと。短いシーンでここまでの存在感は流石。期待をはるかに上回るキャスティングでした。

他にもタスク(仲野太賀)や奈々(ともさかりえ)、ペンタックス(中島歩)。
少ないシーンで最高な余韻を残してくれて素晴らしかった。

「結婚なんかバカかノリじゃないとできない」
「安全な場所からバカにしているだけ」
「恋愛は憎んでいる誰かより、側にいて愛してくれる人を容赦なく傷つける」
仲野太賀が言うとなんか説得力がすごくて立ち直れない。大河頑張れ。太賀が大河。

森七菜の手紙を読む声良かったな。
本当に泣いてたんじゃないかなと思うような声だった。冒頭のウユニでカメラから離した目から涙が出てて、そこで既に泣いちゃった。

今村撮影監督の海を上から見た画は本作でも良い。Netflix「パレード」も綺麗だった。

主題歌は書き下ろしなのかなぁ。
「愛される為に愛すのは悲劇」
原作にもそんな言葉が出てくる。
そうなんだよね、悲劇なんだよそんなの。
主題歌とタイトルバックのタイミングもとても良い。

*******

私はキャストの誰かの猛烈なファンとかではないけど、たぶん原作の世界観がものすごく好きで、この映画を好きな映画にしたかったんだと思う。で、最高のコンディションで挑んでめでたくそうなったので、映画の受け取り方が上手になったというか、成功したなという充実感・満足感で満たされています。

「よくわからんかった」で終えるのも、好きな映画にするのも自分次第で本当に映画は好みだよなぁ、と皆さんの感想を読んで改めて思いながら2回目の鑑賞も終え、原作も読み切って、3回目の予約をするところです。
Rain

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