しげもん

四月になれば彼女はのしげもんのネタバレレビュー・内容・結末

四月になれば彼女は(2024年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

広告に力が入っていたようで、劇場にて幾度も予告編を観ました。雰囲気がよさそうだったので、(あまりお話には期待せず)いい感じの雰囲気を味わいたいと思い、観賞しました。3月が忙しく映画館に行けていなかったので、失礼ながらそのリハビリも兼ねようと考えていました。結果から言うと、完全に想像以上のものをお出しされて肝を抜かれました。
原作の小説は未読ですので、その点ご了承ください。


よかった点。
画で見せるような演出が多かった点が私好みでした。本作では構図を利用したり隠喩を用いたりと、とにかく台詞を排した表現が多用されています。こうした映像作品だからこそなせる技は、見かけるだけで嬉しくなります。私が理解できる程度の分かりやすいものだったことも助かりました。一方で、どうしても押さえねばならない重要な部分は分かりやすく演出してくださっていた点も高評価です。


気になった点。
時間軸の読み取りが少し大変かもしれないと感じました。本作ではしばしば現在と過去を行ったり来たりしますが、それが言葉で説明されることはありません。時間の経過なども、自らが読み取らなければいけません。時間軸に関してはもう一段階だけ分かりやすくしてもよかったように思います。


全体を通して非常に詩的な作品だと感じました。観賞前の想定とは異なり、主題が私好みで期待をいい意味で裏切られました。

印象に残った場面として、ヒロインの二人が泣きながら撮影をするシーンが心に焼き付いています。個人的には、あのシーンがクライマックスであると解釈しています。

最後に波に打たれながら二人が抱き合うシーンが私にもたらしたものは涙ではなく、鳥肌でした。愛という呪いに囚われた二人が、もがき、苦しみ、逃れ、身を寄せを繰り返してゆく。これは愚かなことでしょうか。私はこれをたまらなく美しいと感じました。愛を終わらせない方法、それは手に入れないことだと彼女は言いました。私は少しだけ違うと考えます。愛を終わらせない方法、それは求め続けることではないか、と。これはなにも愛に限ったことではありません。人は何かを手に入れると自分の一部、在って当たり前のものとして捉えてしまいます。これを避けるためには求め続けること、それが必要です。一度手放しても、また求めて拾い上げる。手に入れてもなお、求め続ける。求めるからこそ、愛を注ぐ。欲望の炎は、絶やすことなく。酷く人間的で美しいとは思いませんか。

などと、作品に感化され気味の悪いポエムを書いてしまいましが、本作で彼らが出した答えはこんな気持ち悪いものではありません。一度壊れた関係は、結び直されることでより強固になるといいます。彼らの行く先で、愛の灯火が潰えませぬように。

恋愛経験の乏しい私と、それなりの経験をされてきた方々では、捉え方も異なる作品ではないかと思います。共通しているのは、映像から読み取る力が求められるという点でしょうか。“ただの恋愛映画”だと思って観に行くと少し痛い目を見るかもしれません。

評点として、主題が私好みだったので0.3点ほど加算させていただいています。



──四月は、今も嫌いですか?
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