Jun潤

世界のはしっこ、ちいさな教室のJun潤のレビュー・感想・評価

4.0
2023.07.21

予告を見て気になった作品。

ブルキナファソ、シベリア、バングラデシュ。
日本から遠く離れた土地で、それぞれの人生をかけて子ども達を教え導く三人の教育者たち。
彼女らの“闘い”の日々を描くドキュメンタリー。

ブルキナファソのティオガガラ村に赴任したサンドリーヌ。
教室の壁は低いのに、言語の壁が高く、教育格差はもっと高い。
遠く離れた娘たち家族を想うサンドリーヌ。
彼女の教育を通じて、先生を夢見る生徒も現れた。
村に先生がいれば、自分のように家族と離れ離れになる人は少なくなっていく。
次の世代を教育することの重要性が感じられました。

シベリアの遊牧民に対して移動教室を開くスヴェトラーナ。
エヴェンキ族の伝統を絶やさないように授業を通して継承していく。
同時に、かつて町の学校まで通っていた自分のような大変な思いを次の世代には背負わせまいと、移動教室という変化を加えた。
教えている子ども達に対してもまた、伝統を守りつつ、次の世代に合わせられる導き手にするという信念を持っていたのかもしれませんね。

バングラデシュのスナムガンジ地区、ここ数年は集落が水没してしまい、赴任してきたタスリマはボートの上で教室を開いている。
彼女は、家族から進学を反対され、結婚を強いられる教室の女子達の自立にも真剣だった。
進学や結婚だけでなく、人生における学びの重要性を教える教室の存在意義を信じる姿が垣間見えました。

今作を観て日本の教育現場に対する見方が広がった気がします。
昭和や平成に比べるとだいぶ変わってきたように思いますが、学校の職場改善など、問題はまだまだあると思います。
また、多様化していく個性や価値観を尊重する方針についても、コロナ禍でノウハウを積んだオンライン授業やweb教材などを活用できる可能性は十分あると思います。
しかし同時に、社会性を育むための学校という“場所”を維持することも重要なんじゃないのかなと、今作から感じ取れました。

今作の主要なテーマである“教育”、「教え育む」ということ。
今の世代の人が持っている知識を、次の世代へ、そしてまた次の世代へと繋ぎ続けていく。
それが人間という生き物の重要な生態の一つなんじゃないかと思いました。
Jun潤

Jun潤