秀ポン

グランツーリスモの秀ポンのレビュー・感想・評価

グランツーリスモ(2023年製作の映画)
3.5
期待しすぎた!!!
公開前から劇場予告を見る度に泣きそうになり、めちゃめちゃ期待していたんだけど、実際見てみたら上がったハードルを超えてこなかった。

何よりまず"Moon Over The Castle"を流すタイミングは絶対そこじゃない。
序盤の訳のわからないタイミングでお漏らしみたいに流れ出したので「えぇ……」ってなった。
主人公の再起のシーンか、もしくは24時間レースで流して欲しかった!

話についての感想を言うと、事故で観客を殺してしまう展開は確かにキツいんだけど、もっとキツくして良かった。
観客はレースが好きだから観に来ていたはずだ。もしかしたら彼だか彼女だかは、主人公と同様にレーサーになりたいという夢を持ったこともあるかもしれない。

つまり主人公はただ人を殺してしまったというだけでなく、自分と同じものに熱狂を感じる、いわば自分と同じ人種の人間を殺してしまったわけで、そこにもっとフォーカスしてもよかったんじゃないか、そこまでやってこそ見えてくるものがあったんじゃないかと思う。
(例えば生前の観客がレースを楽しみにするシーンを前フリとして入れておくとかだけど、それはグランツーリスモ及びレースを称揚する映画でやれるラインを超え過ぎているというのは分かる)

それと、これはマジで重箱なんだけど、どうしても気になったので書いておく。
初めて走るコースに対して、主人公が「(ゲームでは)何千回も走ったコースだ」って言ってのける胸熱なシーンがあるんだけど、千のオーダーって少なくない?と思ってしまった。
気に入ってるコースだったら普通にそれくらい行きそうじゃん?
万とか、狂気を感じさせるくらいの数字でかましてほしかった。

良かった点としては、師匠としてのデヴィッドハーバーが良すぎた!
ストレンジャーシングスでもバイオレントナイトでもそうだったけど、「心に傷を負い飲んだくれるようになった男」として若者と絡む役が合いすぎている。

それに当然レースシーンも良かった!
鉄の塊が猛スピードで突っ走る様子には、それだけで一種の感動がある。
主人公がゲームを現実のレースのように、または現実のレースをゲームのように知覚する際の演出がマジでかっこいい。車体が換装されていくようなあれ。
予告で見る度に泣きそうになっていたけど、映画の流れの中で見てもやっぱり胸が熱くなった。
今年ベスト級を期待していたので変な感じになっちゃったけど、良い映画だったと思う。

──その他、細かな感想。

・期待してたほどじゃなかったなと思って、この不完全燃焼感を他の人の感想を見ることでなんとかしようとYouTubeを漁ったら、ずらっと並ぶサムネはどれも絶賛調で、「激熱!」「ゲーマーの希望!」「ゲーマーは絶対見るべき!」みたいな煽り文が付いていてゲンナリした。
この映画、そんなにゲーマーの希望になるか?
これは捻くれているかもしれないけど、フィジカルエリートの父親の才能を受け継いだ主人公が無双したってだけの話のようにも見える。
ゲームしかない奴という感じではなく、なんでもやれる奴のやりたいことがたまたまレースだった、みたいな。
それにそもそもゲーマーの希望!みたいな煽り文句は、ゲーマーという隅に追いやられがちな人種の起こした一発逆転を指して言っているのだろうが、そのゲーマー像ってもう古いだろとも思う。

・魂の入ってないダサフォントはどうにかならないか?

・監督は「第9地区」の人だし、脚本は「アメリカンスナイパー」の人だし、本当はもっと攻めた映画にしたかったんじゃないのか?とか思ってしまう。そしてそれが出来なかった理由とかも勘繰ってしまう。
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