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ジャンヌ・デュ・バリー 国王最期の愛人のnetfilmsのレビュー・感想・評価

3.9
  脚本を書いている人はすぐに気付くだろうが、主人公は果たして「正義」なのか「悪」なのかという問いは、昨日の『罪と悪』のようなフィクションによる創作であれば実はほとんど意味がない。然しながらジャンヌ・ダルクやナポレオンや織田信長や紫式部であれば一気に興味を引くような題材にもなり得る。ルイ15世と言えば18世紀の絶世の美男子として有名だったが、北野武の『首』同様にすっかり薹が立ったジョニー・デップにはあまりにも荷が重い。ジョニー・デップ・ファンには大変申し訳ないのだが、アンバー・ハードとの泥沼の離婚裁判を経て、ジョニー・デップの顔はそれ以前とはすっかり人相が変わってしまった。『シザーハンズ』の頃のエキセントリックだったエド様再びを望むのだが、2023年のジョニデ様が演じる若い頃の姿は率直に言って厳しかった。然しながらジャンヌ・ダルク発マリー・アントワネット行きとも云うべき女たちの悲運の歴史はやはり至高で、気品溢れる衣装や建築物の優雅で上品な佇まいにはフランスが有した宮廷貴族の絢爛豪華な生活が垣間見える。

 その時点では完全に池田理代子の『ベルサイユのばら』案件なのだが、何を思ったのか今作の監督であるマイウェンが今作の主人公と呼ぶべき貧しいお針子の私生児として生まれたジャンヌ・デュ・バリーを演じ始めたのがそもそものケチの付け初めである。駆け足で説明的に描かれる幼少期~少女期を経て、青年期に向かうジャンヌ・デュ・バリーの様子にはある種の陶酔感もあったのだが、いかにもラテン系という口の大きなマイウェン様が登場した時点で、いやいやこれはセイでしょと。幾ら没落の兆しが見えるとはいえ、かつてのジョニー・デップはウィノナ・ライダーをも虜にした生粋のイケメンだったしその相手として監督自身が相応しいのかと問われれば何も彼女ではなく、フランス中の女優を当たれば良いだけの話で、監督のマイウェンが娼婦であり当代きっての愛人を演じるのは流石に無理があり過ぎたように思う。然しながら自分が主演も兼ねた思い入れもあるのかもしれないが、女同士の嫉妬に狂った宮廷譚や若かりしマリー・アントワネットの登場シーンなど、時の華やかな宮廷のフリーダムな雰囲気を感じさせる演出は決して悪くない。時系列は逆になったものの、ソフィア・コッポラの『マリー・アントワネット』と2本立てで観たい。
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