千年女優

瞳をとじての千年女優のレビュー・感想・評価

瞳をとじて(2023年製作の映画)
4.0
1990年代、老人が男に生き別れた実の娘捜索を頼む映画『別れのまなざし』撮影中に突如主演俳優のフリオが失踪する事件が発生。様々な憶測と共に20年以上を経た現在でも衆目を集め、企画されたTV番組に証言者として出演した元映画監督のミゲル。取材協力の中で改めて事件に向き合い、親友を探す旅へ出た彼の行方を追うドラマ映画です。

1940年生れのスペイン人監督で『ミツバチのささやき』でのサン・セバスティアン国際映画祭グランプリやカンヌ国際映画祭審査員賞を獲得した『マルメロの陽光』で名声を高めながら二十世紀に三本と寡作の作家ビクトル・エリセが21年ぶりに手掛けた長編四作目で、老いても変わらぬ繊細で抒情的な物語が各国の評論家から絶賛されました。

老監督らしい間を恐れぬ重厚なドラマで、淡々と人探し物語を展開しながら人生や映画への熱き想いを込めます。様々な形で変わる名が示す所在なきアイデンティティ、過去作からのキャスト流用で示すそれでも受け継れるもの。薄れゆく人の「記憶」と残り続けるフィルムの「記録」の邂逅をスクリーンと観客の対面で描く機智ある一作です。
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