まさわ

瞳をとじてのまさわのレビュー・感想・評価

瞳をとじて(2023年製作の映画)
4.5
人をその人たらしめるものは記憶が大事だと思われがちだけど、人間は記憶がどうあろうと感じることができる。感じ方そのものがその人をその人たらしめ、感じることこそが生きてることなんだと、この作品を見て改めて思った。
また身体と感情を使ってなされる演技という表現が人間に与える影響についても考えてしまう。からだと心を使って確かに経験したことなのに、それが虚構であるときに人間はどう理解し、心身に「残る」ものなのだろうか。
映画のなかの俳優フリオ、それを演じるホセ・コロナド…入れ子のように存在する2人の俳優がまっすぐスクリーンのこちら側に視線を投げかけるラストは映画でしか成立しえない、そして観客が映画館でスクリーン越しに見ることでしか享受できない感情が生まれる。

『ミツバチのささやき』の冒頭で描かれた移動映画館も今作のなかでは遠い過去のことで、街にある映画館さえも廃墟と化している。ロケで撮ったラッシュをその街その街で映写してたエピソードが語られるが、そんなふうに映画制作の現場と地方の映画館が密につながっていた時代があったことが、羨ましい。
まさわ

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