しだたくみ

瞳をとじてのしだたくみのレビュー・感想・評価

瞳をとじて(2023年製作の映画)
4.2
確かにゆったりとはしているが、全てのシーンが美しくて長さなんて全く感じない。フィルム映画への懐かしさも語られるけど、懐古主義的な撮り方を一切していないのも素晴らしい。

多くを語らないフリオは、こちら側の語り方によっていくらでも見え方が変わる人物。その奥に秘めるものを当時誰も理解できていなかったけど、主人公ミゲルが自分の人生を辿り直しながら、フリオの奥にあるものにもう一度迫ろうとする。

その人がどんな人生を歩んできたかは表層的な発言だけでは判断できない。フリオを取り巻く優しい人々が、コンテクストを丁寧に理解し、歩み寄っていくことの大切さを教えてくれる。

とはいえ、ほぼ年配の人物しか出てこないこの映画の本質は、自分があと何十年か経って、老いや喪失をもっともっとリアルに体感できた時にわかる気がする。そんな余白を与えてくれるところも素敵なのだが!

監督自身が映画の可能性を諦めてないラストシーンはとにかく最高。ミゲルはエリセなのだなと。
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