主人公・百合が可愛いです。特に序盤、荒みきって目の死んでいる様が良いです。貧しい経済状態と集団の中で摩耗している姿はとても印象に残りました。
他の人物としては、食堂のおばちゃんが怖いです。途中に出てくる警官も怖いですが、おばちゃんはベクトルの違うヤバさがあります。同時代人にはああした思想はどう映っていたのでしょうか。
百合の「日本は良い国になる」という台詞がありますが、そう言えるほど彼女が現代社会の中で幸福を享受できているようには思えませんでした。彰の最後にしても百合の父親と同じ結果を辿っています。結局は同質の不幸を再生産しただけのように感じました。時代に依らない幸福論が提示されずに終わったのが残念です。
他人からの受け売りでしかありませんが、百合が自身の目標を見つけられて良かったです。
