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Bi Gan | A SHORT STORY/ビー・ガン | ショートストーリー/壊れた太陽の心のnetfilmsのレビュー・感想・評価

4.1
 ビー・ガンの15分の新作短編がワンコインで観られるということで宮下公園前に喜び勇んで馳せ参じたものの、限定ポスターやビー・ガンのグッズを一通り買っていたらあっという間に数千円行き、『ロングデイズ・ジャーニー この夜の涯てへ3D』のチケット代も含めて結局10000円近く散在してしまい、完全に配給会社のリアリーライクフィルムズさんの術中にハマってしまう。孤独で変わり者の黒猫は、自由になりたいカカシに「この世の中で、一番大切なものは?」と尋ねる。カカシは答えに困り、三人の奇人と会うように黒猫にそっと伝えるのだ。そこから黒猫の奇人探しの幻想譚の幕が開く。四隅が丸みを帯びたスタンダード・サイズのフレームの中で繰り広げられる幻想的な光景は真っ先にデヴィッド・ロウリーの『ア・ゴースト・ストーリー』を想起させる。二人羽織のようなロボットのお腹からはち切れんばかりにばら撒かれた飴。愛した男を忘れるためにひたすら麺を食べ続ける女性はウォン・カーウァイの『恋する惑星』を連想する。滑車ではなく、線路の上を移動する家こそが今作のメルヘンで、そのどちらもが孤児院で育った悲しい生い立ちを漂わせる。線路とロープウェイとが地続きの奇跡のような世界線では、絶えず動き続ける心臓のように一時たりとも動きを止めない。ビー・ガン組の主のようなチェン・ヨンゾンはこの一連の謀の支配者として登場する。何と大型ペットショップに依頼されたという2~3分のCMからこの度15分のアイデアに裏打ちされた中国第8世代の雄ビー・ガンの奇跡のような15分の幻想譚。
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