いつもいっちゃん

哀れなるものたちのいつもいっちゃんのレビュー・感想・評価

哀れなるものたち(2023年製作の映画)
5.0
ヨルゴス・ランティモス監督最新作。
めっちゃ楽しみにしてました。
ゴールデングローブ賞ミュージカル・コメディ部門作品賞、主演女優賞受賞。
ヴェネチア国際映画祭金獅子賞受賞。
アカデミー賞でも大本命ですね。
しかし、これを先行上映でやるのは不思議でならない。
アカデミー賞ノミネート発表前に合わせてくれたのは純粋に嬉しい。

やっぱりものすごく変な映画ではあるものの過去の監督作品と比較すると観やすくはなっていたし、さらなる進化が止まらない。
映像、音楽共に刺激的な映画体験でした。
モノクロからカラーになっていく。
どこをとってもまさに絵画。
まるで世界が色づいて見えるベラの目線で物語は進行。
自殺した女性の遺体に赤ん坊の脳を移植したことで生まれたベラ・バクスター。
彼女の虜になった町医者と結婚を前に、壮大な旅に出る。
しかしその旅は彼女の人格を形成していく重大な出来事に発展していく。
異形への慈愛に満ちた優しい映画でした。
穢らわしいとされるモノ、言動、職業に対しての肯定。
善悪に対しての人の選択と生き様に、無の人間を通して直球に問いかけてくる傑作。
大人の寓話としてもバッチリ面白い。
アンモラルのようでかなり真摯な作品の様に感じました。
男の滑稽さも描きつつ、不思議と調和がとれている。
そして避けては通れないセックス描写。
よくぞ無修正で、R18+指定で公開してくれました!
性への悦びも、不条理な要求も赤裸々。
しかしそれをブラックコメディとして作用させ、男女の性のあり方もちゃんと描いている。
また世にいる誰からも性的対象にされない人々にも焦点を当てているのもこの作品の優しさ。
そしてエマ・ストーンの心配になるくらいの体当たり演技と喜怒哀楽の豊かさが新しいキャラクター造形に作用していました。
脇を固めるキャラクターたち、それを演じる俳優陣たちも濃い。
人間の醜悪さと慈愛、両方を兼ね備えたいびつな世界観。
こんなの面白いに決まっている。
また観たい。