ひ

哀れなるものたちのひのネタバレレビュー・内容・結末

哀れなるものたち(2023年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

女王陛下のお気に入りで丸くなってたらどうしようかと思ってたけど全然ランティモスだった。最高だった。
ベラが世界を知れば識るほど生まれゆく因果に、その応報に、感嘆せずにはいられなかった。どこを切り取っても絵画になるような映像の数々、現実が残酷なほど明らかになるにつれ、鮮やかさを増していくのが素晴らしかった。
タイトルでも劇中でも繰り返された、人間たちの“Poor”をこれでもかと見せつけてくるところ、ランティモスらしくて本当〜〜〜〜に良かった。ああ、美しかった。醜かった。映画館で観てよかった。
そしてメタファーたっぷりのエンディングでゲラゲラ笑ってしまった。私しか笑ってなかった。バックグラウンドで流れていた水音、ベラの脳だけが知る羊水の音だと思いますか?それとも、身投げした体の鼓膜にこびりついた水底の音?
も〜〜〜〜13 going on 30でダンスさせられてたラファロを踊らせるのもめちゃくちゃ最高。やっぱり怪演が似合う。推し監督が撮る推し俳優ってこんなに栄養あるんだ。ありがとう世界……。
女王陛下〜は原題の方が良かったと思ってたけど、今回は邦題もめちゃくちゃぴったり。
もしもフランケンシュタインの怪物が醜くなければ、もしもフランケンシュタイン博士が父性を持っていれば。けれどきっと、どうしたって、辿る結末は“POOR THINGS”なんだろう。ご覧よ、怪物のように醜いゴッドと、彼を生み出した父性の欠陥した創造主を。哀れなるものたち。運命は巡る。貧しきものに富を、持つ者は持たざる者へ施しを、病めるものに救いを、無知に知を、罪には罰を。知恵の実を食べたイヴは二度と楽園へは帰らない。それでいい。哀れなるものたち。それだけの話なのだ。
ランティモス、美しい材料だけを使って醜い画を撮る技術に長けすぎている。
彼の目に映る世界の、なんと艶やかで悍ましいことか。重い体引きずって行った甲斐がありました。やっぱりランティモス大好き。

【追記】ベラは冒険とゴッド(神であり創造主であり父であり、奇しくもベラ──フランケンシュタインの怪物──にMONSTERとなじられた人間)から受け継いだロジカルシンキングを元に「より良く」あろうとしているけれど、ベラの冒険って結局は、自分の足で踏みしめた国々(とても世界なんて呼べないちっぽけな範囲の)、その目と耳と体で感じ取ったもの、書物から学んだこと、そこから培った「たったそれだけでしかない」経験。なんて愚かで滑稽で貧相でお粗末な、そう、POOR THINGSでしょう。
【また追記】
女王陛下〜でもレイチェル・ワイズに「カント!」って言わせてたけど、今作はラファロの「カーーーーーーント!!!!」が聞けて笑った。
ひ