Mizuha

哀れなるものたちのMizuhaのレビュー・感想・評価

哀れなるものたち(2023年製作の映画)
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率直な感想としては新説あるいは逆説フランケンシュタインって感じだった(ほぼ前情報入れてないからわからんけど、そもそもそういう謳い文句だったりして)
死体から生み出されたベラが美しく男たちから求められるのに対して、創造主のゴッドの顔がツギハギだらけで、生み出したものにモンスターと罵られる。やってること自体は本家フランケンシュタインと同じだから、ルッキズムに対する批判を私は感じた。

あとは、性的に消費されることへの抵抗と、自分の身体の所有権の主張も強いテーマとしてあったと思う。前者は何もベラに限ったことじゃなくて、セックスの相手としてしかベラに必要とされなかったダンカンにも当て嵌まるんじゃないかな。ダンカン自身がベラに対して知性を求めてなかったってのも原因だろうけど、愛を求めた相手にただ行為だけを求められるの男女問わずしんどいよね。まぁ、初対面でいきなり手を出してくるし、100人切りしたことを自慢として語っていた奴に同情の余地はないが!
ベラが知識はあるのに、あまりにもその辺の情緒が未発達なのが不思議だったんだけど、彼女にとっては身体的な快・不快と精神が繋がってなかったんじゃないかなと今になって思う。もともと別人の脳味噌ですし。

元旦那には(おそらく)望まない妊娠をさせられ、娼婦になったことをダンカンに罵られたベラにとっては、マックスウェルの「君の身体は君の好きなようにしなよ」的なセリフが刺さったんだろうな。自分の身体を自分の意思で使うことを認められた訳なので。だから、一番自分の身体を好き勝手にされたゴッドの所業を黙ってたのはかなりショックだったのでは。お前もかい!
そんで結局元旦那の身体をいじってヤギ男というモンスターを彼女も生み出してしまう、と。
うーん、救いがない。

好きか嫌いかで言うと割と嫌いな方に入るんだけど、いろんな考察のしがいがあって見直したくなる映画ではあった。どうか過激な女性優位主義者とかアンチフェミに利用されませんように。
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