ぽん

哀れなるものたちのぽんのネタバレレビュー・内容・結末

哀れなるものたち(2023年製作の映画)
4.9

このレビューはネタバレを含みます

エンターテイメントとしてシンプルにめちゃくちゃ面白いうえ、映画を観て「勇気をもらえる」と思ったのは初めて。ランティモス監督は以前からずっと大好きだけどそれが氏の作品になるとは思ってもみなかった。なんだかずっと思い出し泣きを堪えている。

無垢で理想家だったベラが「できうる限り誠実に、言葉を尽くして対話を試みても決して届かない人間がいる」というどうしようもない現実を受け入れざるを得なかったことがとても寂しくてこの世って最悪!と思うと同時に、ラストカットの大人になったベラの表情がとても美しくて泣いてしまった。哀しみと戦いながら、清濁併せ持って生きていく人間の美しさがあの表情に全部詰まってた。エマ・ストーン、バケモンすぎる。
やっぱ話通じない奴はヤギにしちゃうしかない…という話かというとそうでもなくて、かと言って相互理解は必ず達成されるという話でもないところが好き。哀しみや遣る瀬なさを抱えながら、少しでもマシな世界になるよう前へ進もうという話。


ゴッドが自分に言い聞かせるように無理矢理肯定していた父親のことを最後にちゃんと「最悪」と認めることができたのも本当に良かった。「我が子を愛するということ」をベラを愛することを通して身をもって知ることができた。そういう意味ではやはり彼女は正しく「実験体」で、ゴッドは父親とは違う人間であったという実験結果が出たにすぎない。とても好きな希望だ。


また新しいタイプのジャンルなれどランティモス節はバッチリ健在で、頭のてっぺんからつま先まで完璧な美しさ。ヘンなカメラワーク、心臓に悪いシーンの切り替わり、本当に毎秒全部かっこいい。『CURE』とかもそうだけど、なんかもう「これになりたい」んだよね。「こういう映画を撮りたい」とかそういうことじゃなく。圧倒的に完璧なものへの憧れ。
もうこのくらい完璧な映画しか観たくないかもだな〜〜〜
ぽん

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