コマミー

哀れなるものたちのコマミーのレビュー・感想・評価

哀れなるものたち(2023年製作の映画)
4.0
【死から驚異的な存在へ】



彼女は"ベラ"

彼女はある日…"自ら命を捨てた"

しかし、外科医"ゴドウィン"によってその死体は拾われ、彼女は彼女が身ごもっていた"赤ん坊の脳みそ"を使って生き返った…。

最初はもちろん身体は成人女性、だが精神は生まれたての赤ん坊であるため喃語しか話せなかったが、その"成長速度も早かった"…。

ある程度成長した彼女は、ゴドウィンの助手である医学生の"マックス"と婚約する事になるが、その前に手続きをするために弁護士の"ダンカン"がやってくる

かなりの放蕩癖があるダンカン。そんなダンカンはベラに惚れ込み、彼女を"大陸横断の旅"に連れ込む。

ベラの夢は「外へ出て、様々な事を経験する事」…ここから彼女の"闇なる飛躍"が幕を開けるのだった…。


これも昨年の「バービー」同様、1人の女性が男性の所有物であることから脱却していく物語なのだが、彼女は自ら"連続した性行為"ややや破天荒な素振りで男性たちのみならず、人々を魅了し巻き込んでく、まさに"王者とも言えるべき"地位に上り詰める物語だったなと感じた。
乗れない展開も多々あったのだが、一律して"ランティモス"が描いた「籠の中から鳥(人間)が解き放たれる瞬間」の物語の一つであり、不思議と笑みも溢れた作品の一つだった。

ベラは自ら"搾取される側に転じていく"のだが、それもこれも"自らの意思"でやっている事であり、これはベラが発信する「私の体は私のもの」という男性による支配からの"抗い"の表れであり、実際にもベラが勤めることになる"娼館"の客に対しても、その抗いが充分に表れてる事が表現されていて極めて興味深かった。めちゃめちゃ"斜め上の解釈"で見れる、"女性解放"の物語だったのだ。

めちゃめちゃ"エマ・ストーン"が"体当たりの演技"をしてくるので心配になるのだが、ランティモスとの意気投合によってこのベラのキャラクター性が生み出された事をしり、安心した。そう、これまでのランティモス作品同様、"俳優たちの演技合戦"が今回も火蓋を切られた作品であり、この奇抜な世界観に俳優たちが最高にマッチしていた。とんでもなく重要な役として、ライナー・ベルナー・ファスビンダー作品の大女優"ハンナ・シグラ"が出ていたのには驚いた。作中にもファスビンダーの「ケレル」のオマージュが入ってるらしく、これはファスビンダー好きは見るしかないなと感じた。
そして世界観の話が何度も出てきたが、劇中の建物や背景の"色使い"や"造形"がまるで"AI生成で作られたかのような"独特の風貌をしているのも注目だ。実は大半のセットが"1から作られている"のだという。中でもリスボンの街並みや豪華客席の外観やらが奇抜すぎて見惚れてしまった。同時に、"ベラが見ている世界観"はこのように全てが奇抜で、独創的で溢れている事も感じ、「ならばこういう世界観になるよな」と1人そう思った。それを映す、ランティモスの定番となった"魚眼レンズ"が本作の独創性を上げてくれる。

"サーチライト"の作品史上、最も奇妙な作品と言っても過言ではないのではないか?そしてめちゃめちゃ体当たりで、「女性解放」を訴えた作品と言っても良いだろう。昨年がワーナーの「バービー」ならば、今年は間違いなく本作。今年のアカデミー賞はまた波乱の展開になりそうだが、できれば女優賞はエマが取って欲しいなと感じた。

寧ろ、そうしないと元が取れないのではと思っている自分がいた…。
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