KenzOasis

哀れなるものたちのKenzOasisのレビュー・感想・評価

哀れなるものたち(2023年製作の映画)
3.5
やりやがったなヨルゴス・ランティモス!!それに尽きる映画かもしれないし、それ以上の驚異的な何かかもしれない。フランケンシュタイン・ギアセカンド。

とことん強烈な作品だけど、総じて抜群の美術と、抑圧を感じさせる魚眼レンズ描写、豊かなボケ感で人物の表情と魅力を際立たせるなど、多彩な画角を駆使したカメラワークは素晴らしい〜の一言に尽きる。
弦を緩めた楽器のぼよよん感、不協和音のバランスもすごい。

ウィレム・デフォーの鼻にかかったような声は相変わらず最高だし、マーク・ラファロの眼差しも相変わらず最高。ちんちんに脳がある人の目です(失敬)。

エマ・ストーンはもう語らずとも。そこまでせんで良い人だろアンタと言いたくなるが、プロデューサーとして関わるだけでなくそこまでする価値が、ベラというキャラクターにはあったのだろう。

本作での、すべてをさらけ出すような演技をしたエマ・ストーン曰く「これはロマンスコメディだと思う。ベラが人生そのものに恋をする話だ」。

赤ん坊の脳を移植されたベラは、すべてに本能的に反応する。色欲を知って世界が色づくと、途端に彼女は歪で不可思議なバランスで成り立つ世界に興味を持つ。すべてを自分の目で見て、一切のベールもかけずに言葉にし、自分で決めていく。

個人的な解釈にはなるが、エマ・ストーンのいう「人生そのものに恋をする」とは、ありとあらゆる欲の押し付けそっちのけで、快楽も幸福も自分の意志で選ぶということではないだろうか。

物語の後半にさしかかると、コメディから一転、突然悲壮な空気が漂いはじめて終結する。社会は哀れなままである。「良識ある社会」なんてものは、人間なんてものはどこまでも傲慢なだけだと気付かされるような物語でありつつ、ベラというキャラクターの強さが際立つ映画だった。

さて我々は、この哀れさからどう脱却しましょうか。
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