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哀れなるものたちのsoloのネタバレレビュー・内容・結末

哀れなるものたち(2023年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

まず最初エマ・ストーンが川に身投げをするシーンから始まるんだけどいいシーンよね…エマ・ストーン初っ端から綺麗。

医学生のマキャンドルが「なんて美しい痴人なんだ…」いうてましたんで。
バクスター博士の家にいるあたりではなんていうか谷崎潤一郎の「痴人の愛」みたいなかんじでベラが無双していく感じなんか?無垢さと素直さの無双か?
なんて安直に考えてたけど違ったね〜。いやわりといい線行ってないか俺?
ダンカンと駆け落ちしてからが予想と反しベラが割と世界にわりと受け入れられてて(違うか、ベラがグイグイいきまくってたからか)自分の想像の枠外に展開的にも思考的にもはみ出していく感じが心地よかった。
カリオストロ伯爵みてぇなキャラのちょい悪ハレンチ弁護士ダンカンとの駆け落ちて聞いて「おいおいお父さん(←バクスター博士)、それはさすがにまずいだろ〜」思ってて案の定駆け落ち逃避行がセックス旅行になってたのはそりゃそうだなんだけども…
だんだんベラがダンカンの手に負えなくなってくる過程がとにかく予想外。いや手に負えなくなるのは分かるんだが、手に負えなくなってダンカンの愛想が尽きてリスボンあたりに捨てられ(てからベラが自力で頑張)るんかと思ってたんよ。

まさかダンカンがベラにどハマりするとはな……
これぞ痴人の愛展開じゃんん…ッ!

純文学的感性じゃんん……ッ!
それが映画で観れる世の中になったんやなぁ!とか思っててん。
しかし常に刺激的で手に負えないものにどハマりするあたりダンカンもダンカンでただのちょい悪親父じゃなくってそれなりに"冒険者"ではあったのかもしれん。
ただなんていうか…相手が悪過ぎた、な。
あと奢りが過ぎたな。どんまい。
すしざんまいならぬセックス三昧から抜け出した後のベラがまぁー…とにかくひたすらに美しく凛々しい。
不思議と"強い"とか"聡明"っていう言葉は合わないと思うのよ。よりもなんだろ……
ダンカンにめちゃめちゃ罵られても、まるで平気で言い返すし支配もされないけどそれはベラがダンカンよりも強いからでも賢いからでもなく、より広い世界を実感として知っているからなんよな。
ダンカン含め「世界を見せてやる」言う人何人か出てきてベラが全ノリするけど、後により広い知見を持つ人間が現れ途端今までがすごくくだらなく見えるあのムーブ。見たことないはずだけど、経験したことはある。ベラほどドラマチックにではないにしても。
個人的に船上でベラが「髪の毛触らせてくれ」いうて知り合ったおばあちゃんがめちゃくちゃ素敵で…すき。可愛らしいのに知的なマダムよな。
あとはずっと言ってるけどダンカン、好きです。どんどん勇敢で知性に満ち溢れていくベラに相対してぶっ壊れていくちょい悪親父は見てて楽しすぎた。そして同情した(笑)
ラスト見る影もなく元気そうに小悪党になってた彼を見て安心したのは俺だけか?

話が進むにつれ、スタート地点であったバクスター博士やマキャンドルたちの存在は霞んで行きそうなものだけれど逆にどんどんその存在感が濃くなっていくのは胸熱でした。ベラからの手紙…。
パリで博士がベラに緊急用に持たせていた金の量が想像以上の札束だったのは笑った。愛が深すぎて。バクスター博士がさいご幸せそうで俺は嬉しかった。ベラが女版フランケンシュタインかと見る前思ってたりしたんだが、彼こそがなんていうかフランケンシュタインだったなと。
マキャンドルはなんていうか…彼は…すげえな…寛大どころの話じゃないぞ…当初あんなにモブみがあったのに最後らへんスーパーいい男じゃねぇか。
これが冒険を経てベラが得た知見をもとに見る世界なんやろな。
未来なのか過去なのか微妙なラインの世界だったけど男性優位な世界であることはベラが序盤出会う人間が男性ばっかなことからも推察できるよね。
ベラの成長物語でもあるけど、男性の"支配欲"(を俯瞰できる)の物語でもあったなぁと。よくも悪くも支配欲。博士とマキャンドルの、いい意味での愛もそのひとつだったね。
ラストあたりでベラに拳銃突きつけた男が「私の仕事は領土を奪い取ることだ」いうて、ベラが「私は領土じゃない」て返してましたが、やはり人間は本来何者にも支配を受けるものではないんじゃないかなー…て。月並みですが。そのために必要なのは「恐れないこと」「自由"意思"を持つこと」だったり、無垢さと素直さなのね。(実は初手からですけども)ラストの善悪の無さも好きです。エマ・ストーンも好きです。
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