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哀れなるものたちの1000のレビュー・感想・評価

哀れなるものたち(2023年製作の映画)
4.5
見た目は大人、頭脳は子供なエマ・ストーンの珍道中。
男たちはみんな、去勢されているか、痛々しいか、銃を突きつけた状態から余裕で逆転されるどうしようもないthingsとして登場する。しかし、女性なるもののエンパワーメントとして理解してしまうには、『哀れなるものたち』はあまりにもきったねぇサーカスで、見応えがありすぎる。この敵対性に満ちた口当たりはかなり韓国映画っぽい。

ベラは最初から血と快楽を求めており、私たち観客によって見られる客体であると同時に、私たちを映す鏡である。ほんの数分前まではぐずる赤ん坊を殴ろうとしていたベラが、ヒューマニティに目覚め、死にゆく赤子たちに涙を流す場面。ここに含まれたグロテスクさを見逃してしまうなら、本作より『バービー』を見ていたほうがマシだろう。ここにははっきりと、人間なるものの矛盾と欺瞞がある。
これは一方では成長の物語だが、他方では獣としての本質は変わりようがないことを示す物語だ(黒人の紳士が述べるように)。立派な淑女として"成長"したはずのベラが思いついたラストの復讐は、あまりにもチャイルディッシュで苦笑いしてしまう。しかし、だからこそ、あの極悪の元夫でさえ助けてしまう"成長"を解体しており、主題的な複雑さを与えてくれている。

ベラがはじめて音楽なるものに触れる瞬間はとてもきれいだったし、不格好なダンスシーンはまちがいなく本作のハイライトのひとつだろう。
グロいディズニーみたいな舞台セットと衣装もかなりよかったし、それを魚眼レンズでさらに歪ませるというアイデアも気が利いていた。これだけ手の込んだヴィジュアルを作り上げたというだけでもたいした映画だ。ポスターどれも超かっこいい。
見てる最中気がつかなかったが、船で本をくれた婦人、ハンナ・シグラか。いやはや、なるほど。
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