かげぐち

哀れなるものたちのかげぐちのレビュー・感想・評価

哀れなるものたち(2023年製作の映画)
4.3
ヴァージニア・ウルフの「オーランドー」とブラック・ジャックのピノコのことを考えながらみた。古典作品ようなどっしりとした骨子にちょっと悪趣味なSF要素を一匙、物語が動き出す。美しく奇天烈な主人公の視点を通して、人間存在とはなにかという根源的な問いをエンターテイメントの中で描く。アップデートされたフェミニズムにも自然にしっかりと言及。美術も音楽も台詞も秀逸。エログロも決して見世物的ではなく必然的に描かれるのがなんとも上質です。
監督がとりたい画を先行しているかのような視覚的鮮烈さと、枠に囚われないカオスな運動が常にありながら構成には一本筋が通っており、非常に見やすい。大衆にも受け入れられる文学的傑作(「君たちはどう〜」の「わかるやつだけわかってくくればいいよ」的選民思想が感じられない)
子ども→娼婦の延長線上に医者という職業があるのも妙に納得感があり、作品の一貫性を担保していた。

思春期、せめて大学生時代に観たかった映画だ。大人になったいま、ただ感心することしかできず、ちょっと悔しい気持ち。

(時間の都合でドルビーアトモスでみたのですが音楽最高!で脳汁でた。ドルビーアトモスおすすめです)