虚無ヨーク

哀れなるものたちの虚無ヨークのレビュー・感想・評価

哀れなるものたち(2023年製作の映画)
4.2
凄まじい「成長」の映像表現。

成長過程に合わせて映像の色彩が変化するのが面白い。白黒からカラーへ、そして少しずつシャドーが増してコントラストが上がる。「成長」「知る」につれ、影が濃くなるという表現かと思うと深い。

世界描写も、家の外に出たてのファンタジックで作り物感が強い世界から、徐々にリアル調に変化する。この作品独自の世界がそのまま描かれているということではなく、ベラがベラなりに認知している世界が成長に合わせて変化する様子が描き分けられているように思う。

舞台、衣装デザインも予告でわかるように素晴らしい。まるでビョークのMV?テリーギリアムのSF?イマジネーション溢れる世界観にワクワクした。

映像表現に拘りが詰まりまくってる。

音楽も最高。序盤のシンプルで無秩序で遊び心ある曲調から終盤にかけて秩序を持ち、重厚になってくる。音楽もベラの成長に対応している。特に序盤の無秩序でエクスペリメンタルな音楽がかっこよかった。

無垢から達観へ、成長段階を演じ分け、身体張りまくりのエマストーンには賞賛しかない。

ベラの成長、認知の経緯を追うことで、人間の根本的欲求とは、幸福とは、社会とは、倫理とは、進歩とは…普遍的で壮大なテーマを問うようなストーリーで、映像の情報量の多さと相まって、置いてきぼりになってしまう人もいるんではないかと、勝手ながらちょっぴり心配になった。

ラストはハッピーエンドに見せかけたスーパーバッドエンドではないかと思う。

エンドロールのスライドショーにどんな思いが込められているのか観た人と語り合いたい。

何度も見直したいけど、見る時、場所を選ぶなあ笑
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