三太郎

哀れなるものたちの三太郎のネタバレレビュー・内容・結末

哀れなるものたち(2023年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

予告がよく分からなかった為、観るのを渋っていたが、渋っていた自分を反省したいと感じた作品だった。

内容が進むにつれ、この映画の構成に感動させられた。
初めはなぜ白黒で始まったのかとか、背景で流れている不気味な音楽にどういう意味が込められているのか必死に考えながら観ていたが、途中から考える必要がない事に気がついた。
この映画自体がベラと同じように成長していたからである。
生まれたばかりの頃は目はよく見えていない為、白黒で表現。また、背景で流れている音学が不安定さはベラが聞こえている音の様子を表している。
(まぁバクスター邸にいた動物達は関係なくキメラ化していた為、ベラの幻覚とかと全然関係なかったが笑)

物語は進み、ひょんなことから性に興味を抱き、ダンカンについていくことで、性の喜びという「色」を知ることで背景やベラ自身が色付いていく。
そこから今まで関わってこなかった人達と接することで様々な感情を理解していき、だんだんと見えている景色が明確なものとなっていく。
特に船の上でマーサとハリーに出会って、本を読み哲学や社会について学んでいく事で、船に乗った当初の外の景色や船の煙突から出ている煙の色などがどんどん変わっていく様がベラの成長の具合がいかに早いものかを表していたように思えた。

その後、貧民にダンカンの全財産を与えてしまった(船の乗組員に盗られてしまっていたが)事で金が尽き、マルセイユで降ろされるわけだが、そこで売春婦として働き金を稼ぐという事を知る。

そんな最中ゴッドが病気で死にそうになってしまっていた為、ゴッドの元に戻り自分の出生のことについて知る。
ショックを受けるが、受け入れ改めてマックスと結婚することを決める。
結婚式当日、元旦那のアルフィーが現れ、ベラは過去を知る為結婚を辞めてアルフィーの元に行くことを決意。
アルフィーの傍若無人さにベラは過去でアルフィーから逃げる為に自殺した事を悟る。
その後なんやかんやあってアルフィーは自身の足を銃で打ち抜いてしまい、手術するついでに山羊の脳を移植。
最後ベラとマックス、トワネットフェリシティが庭で団欒し、そばでアルフィーが四つん這いになりながら草を頬張っている。
本を読んでいたベラがフェリシティにアルフィーへ水を与えるように促すシーンで幕を閉じる。

何とも不思議な世界観ではあるが、ある人間の人生を映画と共に成長させていく様を描いたとても印象的な作品だった。
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