ラグナロクの足音

哀れなるものたちのラグナロクの足音のレビュー・感想・評価

哀れなるものたち(2023年製作の映画)
4.2
エマ氏オスカー受賞おめでとう。納得。結構原作に寄せてきたなという第一印象。実はこっちが本物のリトルマーメイド実写版であり(嘘)、センター試験直前に絶対欠かせないフランケンデフォー校長&エマストーン又の名をメアリーシェーン予備校教師による"全身"白熱講義『資本主義社会を巡る保険体育総論』とでも呼ぼうか。キャピタリズムがいかに行き詰っているかということが先生の"性の解放"(60年代)を通じて大変よく理解できました。私も先生と同じく、親ガチャとか言わずに欲や夢なんか切り捨てて、熱烈ハンピングしかできない性欲に溺れた自分ら人間たちが逃れられない"哀れさ"を認め、唯一確かな自分の過去を受け入れてくれる半径数メートルの普通の仲間たちと共に小さく生きて参ります。もはやそれしかこの社会を生き抜く術は他に無いのだから。マーゴットロビーには申し訳ないが、バービーなんかじゃ歯が立たないレベルのデプスでジェンダーの本質を突いとる気がした。オストルンドの『逆転のトライアングル』と同様に、これからの超絶格差社会を生きざるおえない(無知な)子どもたちに義務教育の一環として必ず観させたい作品になった。話のプロットは原作ありきということもありシンプルで、それこそリトルマーメイドとまったく同じアダムとイブの失楽園構造。乳児の脳を植え付けられた人造人間の女が知恵を求めて創造者の父親と離別し、世界=資本主義社会の実態を垣間見て、哀れなほどの女性の価値の低さを悟り、理想(ユートピア)を諦め自分の哀れさを肯定=自信を得て仲間と生き抜こうとするまでの話。
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