しおの

哀れなるものたちのしおののレビュー・感想・評価

哀れなるものたち(2023年製作の映画)
2.8
メルヘンチックな大人のお伽噺という体の映画で父権を風刺した風のお話だったか。設定自体がけっこう面白くて引きも良かったがシナリオ的にはなにか常に違和感を覚えるものがあった。あえて不快な描写を突き付けることで現実を自覚させる系の話なので悪趣味の謗りをうけること自体がある種の目的とも言えると思うがそこに感覚的なズレがあった。例えばベラの奔放に不快を催す鑑賞者に錯乱するダンカンを重ねる辺りは男風刺のためのあきらかな狙いだろうが、そのために滑稽なセックスシーンをこれでもかと積み重ねるという発想が私にはもうあまり面白くなかった。またそこを切り取ってエマ・ストーンを体当たり演技だと称賛する声にも違和感を覚える。少なくともエル・トポとかのレベルのエッジの効いたセックスシーンとはほど遠くて見ていて段々うんざりしてくるものがあった。ゴッドとの関係の方が興味があったのだがそっちはうまいこと逃げられたなという気がした。これは娼婦生活の総括も同じで良いやりとりではあるもののまとめに至りお伽噺に包みこんでうやむやにしている印象も残る。ファンタジー世界でフェミニズムを表現したという点で映像的な見所も多かったのだがどこか旧来のものを抜け出せてもいない感じもしてもやもやの残る映画でもあった
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