andes

哀れなるものたちのandesのレビュー・感想・評価

哀れなるものたち(2023年製作の映画)
2.6
世評はなかなか高く、賞レースでもノミネートは多かったが、個人的にはダメダメ映画。いろんな要素に必然性を感じないし、意外に"ありきたり"な印象も受ける。
歪な女性主人公を据えた成長物語をベースに、フェミニズム的な要素や経済格差&差別といった社会派的な側面を描きつつ、荒唐無稽な世界観と悪趣味をぶち込んだ怪作…にはなれなかった。
欠点は多く、まずスチームパンク的な世界観が中途半端で意味が不可解。なぜ、この設定にしたのか?完全に別次元というわけでもなく、ゲーテやらワイルドが出てくるのでリアリティラインが理解できない。時代性は?科学力は?政治は?経済は?など余計なノイズが頭に浮かんだ。つまり、この世界観での「社会構造」が見えづらく、結局ベラの周りの話としか思えない感覚になる(そうなると社会派としては失敗)。
あと、冒険が意外と広がりに欠ける。ベラはリスボンで飯食って、アレクサンドリアでお金をあげて、フランスで身体を売って「世界」を見たとするが、あまり説得力がない。極端である。
基本的にセックスばっかりしているのも気になる。女性の成長はいつも「性」が介在しているのか?まぁ、思うに「性の解放=セックス」的な自立と「性的搾取」的な差別を同時に描こうとして、めちゃくちゃになっている。普通に上手くないと思った。
売りである「映像」も印象に残るカットが無い。この際、不謹慎とか露悪的とかは無視するとして、それにしても画が面白くない。意外と細部に統一感がない、馬車、船、トラムなど別の映画のアイテムのようで、しかも度々、現代に見えてしまう(もし、現代にも繋がる話だから、という言い訳なら最悪である)。例えば、ウェス・アンダーソンやジャン・ピエール・ジュネには少なくとも画的な美学が貫かれている。その点、この監督は赤点である。
なんか微妙にマーケットというか、周りをチラ見している感じがキツイのである。ベラが凹む「子供の死」のシーンもマイルドなのである。チンコ撮ってる暇あったら、あそこを目一杯悲惨に収めなければいけない。フェティッシュを全開にするわけでもなく、「尖った趣味してるけど実は真面目な話なんです」という免罪符をチラつかせて気持ち悪い。
恐らく参考にしたであろう「フランケンシュタイン」(1931)「フリークス」(1932)「マリア・ブラウンの結婚」(1979)の足元にも及ばない。
andes

andes