しゅん

シチリア・サマーのしゅんのレビュー・感想・評価

シチリア・サマー(2022年製作の映画)
4.1
【愛】

1980年、イタリアシチリア島で起きた『ジャッレ事件』を基にした実話ベースの作品です。

当時のイタリアは同性愛者に対する嫌悪が根強く、今作のように街全体で差別や権利剥奪が横行していたようです。

そんな中で青少年2人が手を繋いだ状態で銃殺された事件。この事件をきっかけに同棲愛権利運動がイタリア全土に波及します。
ただ未だにイタリアでは日本同様、同性同士の結婚は法律上認められていません。こんな凄惨な事件を以てしても、意識は変えられても法律は変えられない現実に嫌気が差します。

海外のBL作品が好きでいろんなの観てますが、本作は実話ベースもあってちょっと毛色が違います。
特徴的な異国の美しい街並みや景色、美男同士の絡みなど眼福ですが、その反面苛烈な同性愛差別的な表現が多いです。
言葉だけでなく暴力シーンもあります。
普通のBL作品として観ると痛い目をみます。

また本作は銃声に始まり銃声に終わります。
ラストシーンは直接的な射殺の表現はなく、殺されたんだろうなぁと想像出来るのみです。
誰が射殺したかは鑑賞者に委ねられますが現実同様、十中八九、13歳で甥のトトでしょう。表情や多くのシーンからそれは容易に予想できます。
ただ実際イタリアでは13歳は法では裁かれず、この事件は誰も捕まっていません。
真実は闇の中です。だからこそ敢えて直接的な表現は避けたのではないでしょうか。

ただ人を愛しただけで、周りから憎まれ卑下され社会から断絶される。
そんなことあってはならないのに。
非常に心が苦しくなる作品ですが、観るに値する価値があります。
この作品を観て1人でも多くの人が差別や偏見に対する意識が変わることを心から願ってます。

それにしても海外のBL作品ってライ麦畑が必ずと言っていいほど出ますね。
美しさの象徴なのでしょうか?
それとも何か意味があり僕の知識が浅はかなだけでしょうか?

どちらにしろ美しくも儚く辛い作品です。
しゅん

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