パイルD3

動物界のパイルD3のレビュー・感想・評価

動物界(2023年製作の映画)
4.0
人ならざる者、されど人間…
これは究極の多様性を問う映画でもあり、家族の立ち位置や親の心情に強い何かを投じてくる作品。

そして解放を伴う愛情を持つドラマでもある。正直、予期せぬ意外な流れで、特別な没入感に包まれた。

《変身》
感情が揺さぶられる感触は、ポイントは違うが、親愛と憎悪が入り乱れる家族と主人公の葛藤を描くカフカの不条理小説『変身』を思い出す。

先日逝去した楳図かずお氏の漫画に「半魚人」というこの映画とテーマを同じくする人獣についての傑作があって、遠い繋がりを感じた。

パンデミックと排他性と迫害の恐怖を描きながら、異様なビジュアルも、美しく見えるビジュアルも登場するが、実はティザーなどから短絡的にイメージしていたモンスター的な世界観とは、かけ離れていて感銘をもたらすストーリー。

《animal》
変異動物と言うよりも、魂あればこその生物界全般のストーリーとも言えるが、敢えて“animal“と限定しているのは、このanimalは人間そのものを指していると思われるくらい、人の内面で横行する細やかな感情そのものが中心に置かれている。

《救い》
内包する世界観がミステリアスなメタモルフォーゼをベースにした人間ドラマなので、仮にTVシリーズ等に仕立てたとしても、幾重にも膨らませる要素を持つ題材で、かなり興味深く観られる一本。

ここにどんな救いを見るのかは、人によって異なるだろうとは思うが、哀しみだけではない情動が強く動かされることは間違いない。
パイルD3

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