柏エシディシ

ミックスド・バイ・エリー 俺たちの音楽帝国の柏エシディシのレビュー・感想・評価

3.0
1980年代後半、イタリアナポリの下町生まれ3兄弟が海賊盤ミックステープで成り上がっていく様子を描いた実話ベースのドラマ。
SSCナポリを通じてナポリという街とナポリの人々の気質をわかったつもりになっている私としてはとても楽しく観れた。
とてもナポリっぽいお話。
犯罪まがいながらどこか陽気でカラッとしたノリに微笑ましくなってくる。
褒められた行為ではもちろん無いものの、そのはじまりからして「音楽が好き。音楽を届けたい」という動機が根底にあるから、どこか憎めない。
以前、ビヨークが紛争地域で海賊盤がやり取りしているの知って、海賊盤への考え方を捉え直したという談話を読んだことがある。
そういう自分も西新宿のブートレグ屋などに通い、ライブ盤やコピーのVHSに触れて随分自分の文化的欲求を満たしていたから、どこか後ろめたくも懐かしい気持ちにもなる。
単純なコピー商品であれば、これほどの人気は出なかったであろうし、一部の大企業が利益を占有する市場や流通の仕組みへのアンチテーゼとしても、海賊盤は興味深い存在。
文化が育つ時、その厚みや深みの一部にこういう事もあることは否定出来ないし、時代と共にそういう灰色の部分が無くなっている事が果たして良い事なのか?そうでないのか?判らなくなる。
そんなおおらかな時代への郷愁がこの作品全体にも滲む。
若干ドラマのメリハリに欠ける部分はあるものの、監督シドニー・シビリア、日本でも話題になった「いつだってやめられる」シリーズの方ということ、こういうテイストの映画作家なんですな。ちょっと追ってみたい。
柏エシディシ

柏エシディシ