このレビューはネタバレを含みます
“96時間より100倍凄い”憎しみの臨場感が高揚に変わる2時間40分間”
“愛娘を拉致された男が悪の巣窟に入る”というとリーアム•ニーソンの”96時間”を思い浮かべるが、本作はその100倍くらい壮絶で危険な命懸けの闘いだ。
しかも、実話ベース。
驚きのバイオレンスアクションだが、究極の愛の物語でもある。
脚本、監督が”君に読む物語”のニック•カサデヴエス。
2時間40分という長い上映時間ながら、観客をずっと臨場感の中に浸らせ、夢中にさせておく手腕はさすがだ。
ボブ•ハイタワー(ニコライ•コスター🟰ワルドー)の元妻とその再婚相手を惨殺し、愛娘ギャビを拉致したのは、カルト教団とは名ばかりの、残虐殺人集団。
“警察も手出しできない悪魔から娘を取り戻すには、警官の身分を捨て、命懸けで殺人集団を追うしか手がない”
と教えたのは、そのカルト教団から離脱したケース(マイカ•モンロー)という全身タトゥーの若い女性。
彼女は赤の他人のボブを助けるために、自ら案内人になって、悪魔教団の首謀者の元に飛び込む事を提案する。
人を虫けらのように殺す教団に、個人で立ち向かう。
文字通り、命懸けだ。
何故、ケースはここまでボブを助けるのか?
かつて自分もギャビのように拉致されカルト教団の一員にされ、普通の人生を奪われた事への復讐なのか?
クライマックスに向けて、ケースとボブは身を守るため、復讐のために、銃を打ちまくり、戦場の兵士より残虐になっていく。
その感情は徐々に観客に伝わり、私達も残虐な殺しに慣れていく。
銃弾が放たれる度に、悪魔を殺せ!と願うようになる。
憎しみの感情をボブやケースと共有できるようになり、共に銃を持って闘う観客になっていく。
結末はネタバレになるので控えるが、壮絶なアクションシーンと銃撃シーンは”悪を断つ”目的で正当化され、正義の殺害シーンになっていく。
本当の悪の首謀者を知った時のボブの感情は、例えようもない。
何度彼らを殺しても飽き足らない、究極の憎しみであろう。
脚本に欲を言えば、殺害拉致事件の真相の種明かしが少し早過ぎた事。
しかし、観客はラストシーンに救われる。
誰もが望んでいた、美しいエンディングだ。
本作のマイカ•モンローは、突き抜けて素晴らしい。
個人的には、オスカー、主演女優賞に一推ししたい。
スカーレット•ヨハンソン以来の、久々の才能ある白人若手女優では?
日本では3月公開の
“ロングレッグズ”(独立系ホラー映画で過去10年の最高興行収入達成)での、ニコラス•ケイジとの共演が楽しみだ。