【イマジナリー・フレンド】
アガサ・クリスティの誕生日の前の日の先行上映らしい。
この「ベネチアの亡霊」は、アガサ晩年のミステリーを原案にした作品だ。
ポアロが途中、「二つの大戦を経験し」と言う場面があるが、アガサ自身も二つの大戦を経験している。
「ナイルに死す」はアガサのナイルへのクルーズ旅行がきっかけで書かれたことはよく知られているが、この原案となったと言われている「ハロウィン・パーティー」もアガサの幼少期の体験も盛り込んでいるのではないかと考えたりする。
昨日先行上映の「ジョンウィック」はバイオレントでツッコミどころも満載だが、こちらの方は、ミステリーサスペンスとして見応えがあるように思う。
阿部詩ちゃんがゲストで登壇したのでジョンウィックは満点にしたが、こちらの方が本当は好きだと僕の心の声は囁いている。ケネス・ブラナーは流石だと思う。
さて、亡霊とはいったい何なのか。
(以下ネタバレ)
それはきっと、人に巣食う深い悲しみや怒りや、畏れから生み出される得体のしれないものではないのか。
戦争を含めて多くの人の死や、大切な人の死に直面し、言いようのない深い悲しみに苛まれることもそうだ。
愛する人が苦しんでいるのに助けてあげられなかったことは大きな後悔となるだろう。
子離れ出来ない母親は現代でもいるはずだ。
そんな人の心の奥底に潜む闇が亡霊を生み出してしまうのではないのか。そんなふうに思う。
因みに、アガサは第一次大戦の際、薬剤師のアシスタントをしていて毒物に関する知識を持ってたらしい。
更に、幼少期の特殊な教育環境のなか、いわゆる「イマジナリー・フレンド」がいたことも記録として残っている。そんな経験も、この原案の下地にあるように思う。
ポアロが聞いた声。
それは……。