シネラー

名探偵ポアロ:ベネチアの亡霊のシネラーのレビュー・感想・評価

3.5
ケネス・ブラナーによる
名探偵ポアロのシリーズ第3作を劇場鑑賞。
古典ミステリーとホラーが合わさる作風は、
個人的にシリーズで一番好きだと思った。

ベネチアで探偵業を引退していた
ポアロが館に招かれ、
そこで霊媒師による降霊術と殺人事件に
遭遇する内容となっており、
暗く陰湿な舞台設定とオカルト要素が
事件そのものの怪奇性を増長するようだった。
幽霊的なホラー要素としては、
洗面所や鏡に稲光だったりと
有りがちでベタな見せ方ではあったが、
それでも身構えて驚く場面だった。
一番怖いと思ったのは、
閉ざされた地下室の場面等で
一人称視点になる部分だった。
基本的に暗い舘を舞台している分、
序盤や結末での爽やかな
ベネチアの街並みが良く思え、
物語の幕切れも過去作と比べて
清々しく感じられた。
ポアロが自身の物語としても、
怪奇現象から精神的弱さが描写された末
の行動の変容があるのも好印象だった。

不満点としては、
大きな音で驚かすジャンプスケアが多く、
物語前半から繰り返される為に鬱陶しく
思えてしまった。
又、ある人物への償いに関して、
その人物の行動で犠牲者が
出てしまっているだけに、
仕方がない部分はあるにせよ
ポアロの独断の判断で免責にしても
良いのかと思う部分だった。
加えて、ポアロが幽霊の存在に対して、
結局のところ認めたのか認めてないのか
微妙なところで終わった為、
そこの解釈は中途半端に感じられた。

ポアロのシリーズとしては
あまり耳にしない原作の映画化だが、
前作までの優雅なミステリートラベルと
打って変わってのホラー・ミステリーは、
異色的な新鮮味があって良かった。
レイトショーで鑑賞するには、
ぴったりな内容でもあると思った。
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