ねまる

名探偵ポアロ:ベネチアの亡霊のねまるのレビュー・感想・評価

3.9
運河を漂う船、均等に並んだ像にとまる鴎、広場で群をなす鳩。
これぞケネス・ブラナーという構図で撮られる美しきヴェネチアの街並みに開始3分で満たされる。

今回はホラーテイストということもあり、地面をあえて斜めに撮っていたり、炎や照明で歪ませたり、珍しい演出もたくさん楽しめた。
ほとんどの時間は海が荒れた真夜中の古い建物の中だから、ワンパターンになりそうなのに、驚かせるという仕掛けを作りつつ、常に美しいカットだったなとうっとり。

亡霊、霊媒師、といったミステリーには不確実な要素がどう転ぶかとちょっと不安ではあったんだけど、さすがアガサ・クリスティ原作の軸がしっかりしているので、後半の謎が明かされていくシーンはしっかり気持ち良さを味わわせていただきました。

フーダニットとしては、人数を増やしすぎず、全員が霞まず魅力的で、キャストが活きていて、だからこそ謎の答え合わせが楽しかったのかも。
それぞれの言動、行動、この人ならこれをするだろうとしっくりくるための描写。
なんて美しいミステリーなの。
ベルファスト親子2人が楽しみだったので例に漏れず、心に疵を抱えたジェイミー・ドーナンも、そんな父を支えるために早く大人になった聡明なジュード・ヒルも流石だったし、またケネス・ブラナー作品に出て欲しい。
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