みほみほ

BAD LANDS バッド・ランズのみほみほのレビュー・感想・評価

BAD LANDS バッド・ランズ(2023年製作の映画)
3.7
☕2023年187本目☕39

切なさを含みながらもどこか爽快で、自由への希望を静かに煌めかせるような後味の良いラストが印象的。映画が始まった瞬間は、あまりに独特な世界観で馴染むのに時間がかかったし、全てにおいてとっつきにくかったけれど、そこに生きる人の背景や繋がりを知れば知るほど、観れば観るほどに妙に惹き込まれていき、気付けば没頭していた気がする。

このシーン嫌だな…ってところを過剰に描き過ぎないのも本作では好印象だったし、登場人物が多い割に全体像がさっぱりしていて観やすかった。名前が覚えにくいとかいうこともなく自然と定着していたし、血の繋がりはないがそれ以上の何かで深く結ばれてる姉弟の愛に重きを置いている印象があるので、思いもよらぬ方向からの感動があったりして終盤は大変楽しめました。

この手の作風に用意されるラストって方向性が大体潔く散るようなニュアンスのものが多い気がするんだけど、本作はその点で他作品とは違ったアプローチがあり、切なさはありつつも希望が見えたところが良かった。ラストカットでは静かにガッツポーズするかのような高揚感があったし、皮肉な事に後から実感する他者の想いをたっぷりと感じて胸いっぱいだった。

ひとつ残念だったのは、特に序盤(後半はそうでもない)の関西弁が早口で吐き捨てるように言うのであまりに聴き取りずらく、何を喋ってるんだか全く分からなかったこと。仕方ないから口元を見て理解しようとして、大切なシーンに集中出来なかったりしたので、関西弁のリアリティなのかもしれないけどもう少し聞き取りやすくして欲しかった。(邦画あるある)

宇崎竜童さん演じる曼荼羅(まんだら)、最初は掴みどころがなかったけど、噛めば噛むほど味が出てくるキャラクターというか、ラストスパートは別人?ってな程にかっこよくて流石でした。宇崎竜童さんもかっこいい役を貰えたんだな〜と後から実感したと舞台挨拶で仰っていたけれど、堂々たる迫力と素晴らしい存在感で御歳77歳だなんて信じられないし、あまりに所作が若々しくて自分の祖父や祖母に重ねるとその凄さが改めて分かり驚愕しました。

登壇キャスト陣が豪華で、多分会場の半数以上が山田涼介ファン(私の友人含め)だったと思うのですが、私は生瀬勝久さん(予定にはなかった登壇!)と宇崎竜童さんにやられました。そして刑事の佐竹役をされていた、吉原光夫さんがスクリーンで見る雰囲気とは正反対のワイルドさとオシャレな風格があり素敵な方だなと思いました。

安藤サクラさんってもっとサバサバとしてるイメージだったけど、おっとりしつつも元気な感じで想像とのギャップが面白かったです。
山田涼介は王子様みたいな想像通りの綺麗さだった。スクリーンの中では弟キャラって事もあり、ずっと危なっかしくて憎たらしかったけど、姉を思う気持ちだったり身勝手さだったり、何度も冷や冷やさせられたけど、言葉遣いがイメージにハマらなくて最初はうーんとなりながらも途中からはしっくりきてたので、彼にとってもこういう役柄への挑戦って良い事だと思った。

天童よしみはトークが流石の安定感と堂々たる振る舞いで素晴らしかった。欲を言うなら1曲聴きたかった😂

サリngROCKさんは初めて見たけど、劇中の風貌がデッドレコニングの登場人物まんまだったので、時期的にたまたまなんだろうけど被ってちょっと笑ってしまった。でもデッドレコニングの彼女に負けないくらい不気味でかっこよかった🥹

そしてそしてどうしても書いておきたいのが、生瀬勝久さんが最高だったということ。話始めれば人を惹きつけるし、他の方が話されてる時の聞き方ひとつとっても面白いし、話の繋げ方や広げ方が上手くて素晴らしすぎた。トークスキルがヤバ過ぎて一生聞いていたいし、イメージまんまで現場の不穏な空気も笑いに変えてしまうユーモラスな方で最高に楽しかったです。登壇者リストになかったので、出てきた時は一番興奮してしまいました。ケツメイシのRYOさんに通ずる面白みと魅力のある方だと思った。

素晴らしいキャスト陣を観れて良かったし、映画も食わず嫌いせずに観て良かった。色々な世界があるなと漠然と考えさせられました。

本作で物凄〜く嫌な役をやっていた俳優さん、「鬼談百景」でもかなり最低な役をやられてたんだけど、最低な男だけれどどこか魅力が溢れてしまうという役柄が似合い過ぎる。これからの活躍、もっともっと期待しています。

完成披露試写会にて。
(丸の内TOEI)
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