りょう

BAD LANDS バッド・ランズのりょうのレビュー・感想・評価

BAD LANDS バッド・ランズ(2023年製作の映画)
3.8
 よく言われているとおり、原田眞人監督の作風はクセが強すぎて、単純に好きか嫌いかで評価されがちです。個人的には物語の展開に納得感があれば好きになると思いますが、その意味でもこの作品は微妙でした。人間性までは極悪ではないにしても、散々と悪事をはたらいてきた主人公が最後に…という結末に納得感がなかったからです。
 特殊詐欺をテーマにした物語はとても興味深いものでした。実際の犯行の過程をスリリングに表現した長尺のアバンタイトルが素晴らしく、そこからの展開を期待させます。ネリの弟のジョーが登場してからは、特殊詐欺とは関係のない賭博や殺人、強盗などばかりで、ありがちな犯罪グループの内紛になってしまったのが残念です。特殊詐欺を捜査する警察の物語も複線的に展開しますが、この2つの接点が希薄で、ネリの危機をうまく煽る演出にはなっていません。
 そもそも中盤の殺人で窮地に陥ったはずの2人が、大金をゲットするために思案したりするところが“のんびり”しすぎて緊張感がありません。通帳や印鑑、暗証番号などのセリフがグダグダで、そんな一般的なウンチクを登場人物に説明させる必要はないはずです。クセのあるダイアローグが特徴的な作風なのに、突如として不自然な説明をはじめるセリフが他にもあって、ちょっとアンバランスな印象でした。
 登場人物のほとんどが個性的すぎて、過剰な飽和状態です。なんならセリフのないエキストラまで怪しい雰囲気なので、本筋の物語に没入できないほどでした。警察の捜査班もイキがったメンバーばかりで、特殊詐欺グループの敵対勢力のようです。そんな虚勢をはった登場人物ばかりの143分は、とても疲労感を伴います。いわゆるモブキャラの重要性を痛感したのは“いい気付き”でした。
 なんだか悪口みたいになってしまいましたが、この世界観を綿密に脚色し、演出も演技も徹底して表現しているという意味では、“好きか嫌いか”はともかく、なかなかの秀作だと思います。
 ちなみに、原田眞人監督の作品で音楽を担当している土屋玲子さんは、“月曜日の巫女”で出演していました。序盤から意味深に登場する役柄ですが、その存在の意義はエンディングで判明します。
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