柏エシディシ

イ・チャンドン アイロニーの芸術の柏エシディシのレビュー・感想・評価

3.0
イ・チャンドン自らを案内人に、彼の全作と文筆家としてのキャリアを含めて振り返るドキュメンタリー。
ペパーミントキャンディよろしく、直近のバーニングから時系列を遡る体裁。
出演者たちの言葉から、彼の演出というより作品そのものの構築が俳優との共同作業が如何に大きく独特なのかが良く判る。
そして本当に面白いのは、寡聞にして日本では触れることの少なかった小説家時代や若かりし頃の話で、フッテージに映画の映像を入れ込むのだが、それが違和感がないぐらい、彼の映画作品が彼自身の半生の影響を当然ながら色濃く反映されたものなのだと、良く判る。
特に光州事件の衝撃は、彼の映画作品に通底するヒューマニティやアイロニーの源泉としてやはり避けられないものである、と。
近年の韓国映画で、日本の観客にも広く周知されることになったが、今世界的な民主主義の危機が叫ばれる中、韓国がその痛ましい歴史を敢えて振り返ろうとしているのは必然であるし興味深いと改めて思ったりもした。
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