KnightsofOdessa

とにかく見にきてほしいのKnightsofOdessaのレビュー・感想・評価

とにかく見にきてほしい(2022年製作の映画)
3.0
[スペイン、田舎の家を見に来てよ!] 60点

ホナス・トルエバ監督最新作。チャノ・ドミンゲスによる生演奏で幕を開ける本作品は、ある二組のカップルのポートレイトである。コロナの影響で久しぶりに再開した四人は、互いとの距離感を若干掴めずにいる。なぜならギレルモとスサナのカップルがマドリードを離れていて、いつの間にか妊娠していたからだ。帰宅したダニエルとエレナは二人の言葉について思い返す。英題"You Have to Come and See It"は引っ越した田舎の家を見に来てよ!という意味だが、ここまでしつこく誘ってくるのは、自分たちと同じような人生を送ってこなかったことに対する当てつけなんじゃないか。それに、こんな時期に子供を生むなんて実際どうなん?など(私としては"have to"って言うくらいなんで、都会人のダニエル&エレナが田舎を気に入ってくれることで自分たちの選択を肯定したいだけだと思うが)。ギレルモとスサナにしてみれば、特に悪意はなかったんだろうけど、様々な停滞に身を置くダニエルとエレナにはしっかり刺さっている。そうして、ダニエルとエレナは半年後、不本意そうに田舎の家に遊びに行く。ロックダウンやパンデミックからの連想で、本作品は三つの場所に閉じ込められている。最初は四人が再会するバー、次にダニエルとエレナの暮らす都会の狭いマンション、最後にギレルモとスサナの暮らす田舎の広い家だ。最初のバーはパンデミックによってドミンゲスが生演奏をするのが久しぶりという言葉からも分かる通り、都会にいても遠い場所という印象を与え、久々にマドリードへとやってきたギレルモ&スサナたちとも対等に離れた場所であることが伺える。ダニエル&エレナの家は狭く、暗く(夜だからそれはそうなんだが)、ゴミ回収に追われているという描写によって、ギレルモ&スサナが何気なく紹介する田舎の家の広さが際立っている。しかし、どこで暮らそうと家の中に缶詰にされるのは同じで、だからこそ、どこにいても普遍的な問題が立ち上がってくる。なんとなくミゲル・ゴメス『ツガチハ日記 (The Tsugua Diaries)』に似てるんだが、イベリアの作家の考えることは似るんだろうか。
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