妹の療養のため嫌々ながら母方のお婆さんのお屋敷へ行った思春期真っ盛りの少女ナラ。地元につたわる昔話を聞いてからお婆さんが不気味で仕方がなくなる。絶対にこの婆さんはおかしい。メキシコ発フォークロア婆様ホラー。
メキシコの雰囲気が濃厚であり、老婆も珍しく心身ともにパワフルなキャラクターで、なかなか楽しいホラー映画でした。
お祖母さんというと一般的に孫には優しくて愛情深いイメージがあるので、そうじゃない祖母はそれだけで不気味です。イジー・トルンカ『電子頭脳おばあさん』のお婆さんが怖いのも本来あるべき老婆像からどこまでも外れてゆくからでしょう。この作品では婆様の異様さはユーモラスであると同時に不気味であり、単なる偏屈にも見えると同時にモンスターにも見える絶妙なバランスでした。
血の滴る肉片を朝食に出してくるとか、朝っぱらから古いレコードを大音量でかけてロックチェアで激しく揺れてるだとか、スマホを取り上げて命令するだとか、今時の女子が毛嫌いするようなことを片っ端からやってくる。別の時代を長く生きた人なりの信念やこだわりとは今を生きる孫にとってこれくらい異様な物なのかもしれないと思いました。ちょっと笑ってしまうくらいに「気持ちの悪い」お婆さん描写は世代の隔たりのカリカチュアにも見えました。
孫に好かれようとしない祖母と現代っ子の孫との真剣勝負という前半が面白かった。
最終的にはオカルトと女の業みたいな訳の分からぬお話になる変な映画なのですが、個人的には好きな作品でした。