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ニンフォマニアック Vol.1 ディレクターズカット完全版のmorioのレビュー・感想・評価

3.8
ラース・フォン・トリアー監督作品。
僕にとっては彼の作品初レビューです。本作は2014年公開なのでもう10年以上前の作品。ニンフォマニアック(色情狂)を扱った作品です。いやいやセンシティブなテーマでレビューするのにも気を使いました💦

人によっては嫌悪感抱く方もいらっしゃると思うので鑑賞には気を付けて!でも作品としてはとても面白かったです(^-^)



物語の形式は意外とシンプル。
雪のちらつく広場に倒れていた女性(ジョー)を通りすがりの老紳士(セリグマン)が助け自宅で介抱。その時に彼女から聞かされた話が本作の内容という訳です。だから基本的には会話劇であり回想シーンがほとんどを占めます👧🏻💭

その内容は、幼少時から自分の性欲を意識していたジョーは、15歳の時に初体験をした相手と社会人になってから再会。彼に恋心を抱くもつかの間、他の女性に奪われてしまった彼女は、さまざまな男と関係を持つようになるというお話。


この作品テーマがテーマだけに、性行為が執拗に描かれます。なんせジョーはニンフォなので本能的に衝動的に動きます!もうやりまくりです!(^_^;

でもね、全くこれがエロくないんです。本当に。もっとエロかったら見やすかったのにとも😙彼女が精神的に追い込まれていく様が痛々しくて可哀そう!というのが大方の見方だろうと思います。



前後半併せて5時間半かけて描くドラマや登場人物自体の意味は薄く掘り下げも少ないです。それらは多分記号でしかない。ラースが主張したいがための材料であり設定だと言う印象を受けました。

だから、あれだけ過酷な運命を辿るジョーやセリグマン、夫達にも感情移入しないし、結構なエグいシーンもめっちゃ俯瞰で見れる。それでは監督の主張は何だろう?と数日考えてました🤔でも、分かりそうで結局は良く解らなったです。悔しいけど(^_^;

ある程度こんな感じかなぁというのはあります。セクシャリティ。欲望としての「性」の世の中の扱いにラースは不満を持ち批判しているというのかなとか。

動物の交尾は何ら非難されることがないのに、人間であるジョーは(理性・社会性があるにしても)根源的な欲求に従う主人公のジョーを、頭ごなしに批判できるのだろうか?みたいなこと。


(※以下、ネタバレあり!)

直接的なネタバレは書きませんが、気になる方はここまで。
もう少し見れる人は薄目👁️‍🗨️でお願いします)













物語の中で、彼女は彼女自身の性欲、セクシャリティと苦しみながらもずっと向き合い葛藤しつづけます。その姿はあたかもキリストの受難のよう♱୨୧♱

終盤、身も心もボロボロ。自らの半生を振り返った際「もう女性としてのセクシャリティを排除する」とこぼします。「性」に生きることは辞めて、新しい人生を歩みたいと決心する訳です。

その時、聞き手のセリグマンが終盤に言ったセリフが印象的でした👨
「君のストーリーの主人公がもしも男だったら、それは凡庸な物語になっていただろう」と。つまり女性差別ではないか。結局は男も女も一緒。どちらも特別な話では無い(´;ω;`)!と訴えるわけです。僕は君の味方だよ、と。


しかししかし、そのあと会話は終わり、二人とも別々のは部屋で寝ることになりますが。。。😪。

灯りの消えた部屋。静かにドアが開きます。
そこに現れるはまさかの下半身丸出しセリグマン。彼は彼女の寝込みを襲います。常に冷静に彼女の贖罪を精神科医のごとく聞いていた彼が、最終的には欲望に負けるまさかの行動!

そのあとの展開は言えない。。

けど、とても悲哀を含んだ描かれ方をします。この辺りの人間の本質、弱さみたいなことも重要なテーマだと思いました。上手く言えないけど。キリスト教の宗教観も多分に関係してきます。

「その展開を待ってました!」
「それこそラース監督らしい終い方!」
という意見も多かったです。

それがなかったら駄作だったと。僕も面白いなと思う反面、じゃその意味は何?監督はこれで何を伝えたかったの?ということが解りづらいし、作品内では描かれていないような気もしました。むずいなラース。



ちなみに、忘れてならない点として、この作品のジョーとセリグマンとの会話劇自体が面白いんです😊

重いテーマなのに、いやむしろ重いからこそ、セリグマンのジョーの告白に対しての受け答えの面白さが引き立つのだと思いました。

ジョーがこれまでの性癖や性行動を告白するたびに、少し目を丸くしながらも彼女を否定したり断罪することはせずに「なるほど、解るよ。君は悪くない。例えば。。」という感じで🥸彼女の行為がいかに特別じゃない、悪いことじゃないと受け入れるのです。

その博識に裏付けられた彼のうんちく例えが秀逸で面白いです。電車内で男漁りの数勝負を釣りに例えたり、初体験での行為数「3+5」が「なるほど。フィボナッチ数列という訳か!」と嬉しそうに黄金比と解き素晴らしいと絶賛するじいちゃんセリグマン😙僕は結構本気で笑ってしまいました(ノ˶>ᗜ​<˵)ノ

後半は完全ににシリアスモードなのですが、前半のコメディ要素も作品の大きな魅力でもありましたね。



長く書いた割に、結論が出ずに悔しい限り(´•ᴗ• ก )‬՞ ՞
でも作品としては僕は楽しめたし、もう一回観たいなぁと普通に思う作品でした。ラース監督、鬱三部作とか彼自身鬱を患っていたとか、取扱い要注意人物の気配ぷんぷんですが、これからも興味を持って追いかけていきたいと思いました!
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